やさぐれるなら、日本酒
いつもお世話になっているプロデューサーのKさんが夕方、来訪。
天気予報が狂い、朝からの小雨。師走並みの寒さ。ならばと、鶏塩鍋にする。最近は、Kさんをはじめ、仕事関係者や仲間内で飲むときは、部屋飲みがほとんど。
鶏塩鍋に、高野豆腐といったところで、ビールを飲み、T映画のYさんからいただいて、スタッフ会議で飲み残していた茨城の「武勇」という地酒を飲む。
スタッフがうまいうまいと飲んでいたが、会議のとき、オレはもっぱら角のロックを飲んでいたので、実は、初。が、確かに、この酒うまい。さすが、Yさん。そこいらの酒は贈らない人らしい。
深酒しない程度に飲み、あれこれ仕事のこと、生活のことを語り、夜遅くない時間にKさんは帰った。仕事のつながりを越えて、こうしてなんでも語り合える人がいるというのは、本当にありがたいことだと思う。
それにしても、武勇、うまい。純米酒の辛口と、どこにでもありそうなのに、これまでであったことがなかった。
オレは日本酒を積極的に飲む人間ではないと思っていた。実際、いま、ばばあの店以外、日本酒はほどんど飲まない。
ところが、劇団をやっていた頃の役者のIに久しぶりに会って、六本木旅籠のつまみに、思わず日本酒を頼むと、奴が、「相変わらず、日本酒が好きですね…」とつぶやく。
確かに。忘れていたが、劇団をやっていた頃は、寒くなるとよく日本酒を飲んでいた。だが、この数年は、日本酒の代わりにすし屋にいっても、鶏繁にいっても、いつもシャルドネ。
オレは、あのやさぐれていた時間が、もしかしたら、怖いのかもしれない。と、ふと思う。日本酒から逃走することで、やさぐれた時間と自分から逃れようとしていたのかも…。
Yさんが、最近二人でいく浅草の小さな割烹で、いったことがある。「秀嶋さんは、結局、はちゃめちゃに生きていく人なんだよ。だから、オレは作家として秀嶋さんを尊敬しているし、応援している…」。
そうなのだ。よく考えれば、オレは、結局、あれこれいいながら、日本酒を結構、まだ、飲んでいる。気づいていないのは、我ばかりなり。