秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

ひとりロケハン

今朝、早々に国会議事堂周辺へ自転車を走らせる。

東映のKさんに頼まれた公民科の副教材の宣伝用の写真をデジカメで。乃木坂からは自転車で15分程度の近場だし、企画書でちょい煮詰まっているから、朝の運動気分。

首相官邸を撮っていたら、警備の若い警察官に職質される。例の赤ジャンに、赤のリック…。まさに、左翼のシンボル、赤づくめ。ただでさえ、怪しいといわれているのだがら、この格好で、デジカメとはいえ、写真をとっていたら、そりゃ、職質されるだろ。オレが警察官だったら、即、逮捕だ(爆)。

何かつっこんできたら、ガツンといってやろうというオレの気配を察したのか、「なんか、問題でもあるんですか?」というオレの抑制した反発に、「いや…。問題はない…」とすごすごと退く。主権者である国民の一人が国会周辺の施設写真をとって何が悪い。市民の権利を愚弄する気か、この国家権力の手先め!とは、いわない。

オレは、その国家権力の手先の家に生まれ、国民の血税で、大学まで卒業できた。

ロケハンやシナハンで、一人で撮影場所やネタを探して、徘徊するのは仕事がらみだから、いつものこと。そもそも、一人であちこち歩き回り、探索するのが嫌いではない。

一人作業の孤独に耐えられないとやれない仕事だ。そういう性分は、オレたちの業界では大切な素養のひとつのような気がする。

劇場でも、ロケセットでも、自分の眼と体感で確かめないと、気がすまない。闘いを有利に進めるための秘訣の一つは、地の利を治めること。

それには、現場に自ら足を運び、現場を身体の中に取り込むのが何より。周囲の休憩場所やメシ屋、警察や消防などの眼、人の行き来、騒音など、演技やカット割以外の環境を知ることも大切なのだ。

コンサルタントやプランニングの仕事でも、現地踏査、いわゆるフィールドワークが何よりも大事だといわれるのは、戦略、戦術を立てるのに、現場がすべてだということがわかっているからだ。

現場を持たない奴、現場を重視しない奴、その直接の現場だけではなく、周辺、周囲の環境を知らない奴は、作戦を誤るし、落とすべき敵、オレの場合は観客や視聴者だが、その人心を見失う。現場での作業もうまくいかない。

何よりも作戦参謀でもある監督が、それを知らないようでは、監督失格。監督は絵だけ撮っていればいいものでない。

だから、オレは、制作や助監督に丸投げは絶対にしない。というか、奴らを信じていない。絵のイメージがあるのも、予算についての深慮があるのも、オレ以上に切実な奴はいないからだ。まれに、そうした制作や助監督に出会うと、実にほっとする。

常にいいラインプロデューサーが側にいてくれれば別だが、企画、脚本、演出に同じ熱意とアングルで臨める同志的な関係が構築されていないと、それはなかなか難しい。

オレの住む乃木坂と国会議事堂周辺と、その道すがらは、2.26事件の舞台になった場所。優秀な参謀のいないまま、下士官たちの熱情だけで始まった、日本初のクーデーター。あの失敗も、当てにならない作戦参謀や大将を信じてしまった結果だ。

変革や社会改革といったレボリューションは、みんなで仲良くでは実現しない。孤独なリーダーの孤独な情熱と、それを感じさせない他者を信頼する装いの中にしかない。それがなくては人が動かないからだ。それが、なお、戦士の孤独を深くするが、その微妙なバランスが、作戦を前へ進め、冷静沈着で、的確な行動を実現する。

先頭を走ろうとする人間は、孤独と仲良くできなくてはならない。