秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

路傍に咲く一輪の花のように

午前中、掃除、洗濯、運動。師走のような寒さが緩み、まさに小春日和。寒さにいったん縮んだ体が、緩む。
 
夜、ブッティストの勉強会に三田まで自転車を走らせ、9時過ぎに戻ると、すぐに男優の長部努が来訪。この間の作品で、助監督のアシスタントをやらせ、預けていたデジカメを届けにきた。
 
鶏塩鍋のだしでつくっていた大根の煮つけをふるまう。大根をつまみに、今回の撮影の反省会のようなものをやる。
 
奴に助監督のアシスタントという制作側の視点から、俳優を見てみろと誘ったのはオレ。もう2年ほど前のことになる。視点をかえて、自分がやっている役者の仕事を見れば、きっと学べることがあると思ったからだ。
 
世阿弥のいう「見所の見」を現場でやらせたかった。
 
その成果か、芝居を見る視点が定まって、自分がカメラの前に立つ前、立ってから、そのあと、どういうふるまいが必要なのかを次第に学んでいる。
 
それに合わせて、仕事も大きな仕事がくるようになっている。しかし、それだけではない。
 
勉強熱心な奴は、時間をみつけては、金をかけない旅行をして、見聞や視野を広げようとしている。鹿児島で薩摩藩のことを学ぼうと出かけ、特攻の基地、知覧まで足を延ばし、20代そこそこの若者たちのせつない死を追体験する。
 
というようなことをやっている。今度は広島に行き、原爆ドームを見てくるという。
 
金がないから、インターネットカフェに寝泊まりしながらの低予算旅行。一時は、日払いの仕事でないと食いつなげないほど、大変だった時期もある。そうした中で、学ぶべきこと、知るべきことを得ようと自分なりに工夫している。
 
映画やドラマの学びになるからと、バイトをするならとレンタルショップで働く。
 
オレはいつもいうが、万全の状態があるから人は、新しい地平が開けるのではない。万全の状態でない中で、取り組むからこそ、開ける地平があるのだ。
 
それを信じ、実直に生活の中で実践している奴は、素晴らしい。いつかきっと、こういう俳優は、化ける。しかし、キラキラとスポットを浴び、あるとき消えてしまうような化け方ではない。
 
疲れ切り、明日への夢や希望を失い、これから先の道のりに何があるのだ…。そう思い、ふと人生を投げ出そうと、疲れ切って倒れた路傍に、人知れず咲く、一輪の花がある。
 
あるいは、路傍に倒れ、仰ぎ見た先に、陽の光を浴びて新緑に輝く木々の繁が見える。
 
それ自体は、自分が元気で、満足なときには見えないものだ。だが、人の心がくじけそうになったとき、こんなものが、こんなに素晴らしいのかと人の心を打つ。
 
そんな花や緑の光に化けるときが、きっとくる。
 
奴がメインの「世界の車窓から」の富士通のCMは、それを予感させる。