秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

ワークショップ

芸能プロダクションのOさん、所属ナレーターのKとワークショップの下打ち合わせでRed飲む。

ついこの間、Oさんからは、ご自分も出演する舞台の招待状をいただいていたのだが、届いたのが公演3日前くらいで、いきなりでは予定がつかなかった。なんでもお舅さんが亡くなられたとかで、葬儀や何やでバタバタし、送付が遅れたらしい。

社長をやりながら、自身も俳優として活動するというのは、何かと大変だろう。まして、まだ、弱小プロとあっては、経営的にも至難に違いない。

そんなこんなの話をしながら、11月スタートを目指して、Oさんがワークショップの調整、段取りを進めていくことになった。このワークショップには、オレが花塾と呼んでいる、これまでオレの作品に出演し、秀嶋組ファミリーになっている内田、赤沼、塩原、長部、神川らも参加させたい。

来春リリースする自主作品のオーディションも兼ねられるし、来年の舞台公演へ向けたささやかな一歩にもなる。

劇団をやっていた頃は、舞台稽古のないときは、週3回のワークショップをやっていたし、劇団を解散し、東宝と映像の企画制作会社のサラリーマンの二足のわらじをはいていたときも、芸能プロダクションで20名ほどの若い俳優を教えていた頃がある。東映で監督をやるようになってからは、芸能プロ数社合同のワークショップを2年ばかりやっていた。

オレが高校演劇出身ということもあるのか、若い俳優を鍛え、育てることは苦ではない。自分の演劇理論を、実際、役者を通して検証するというねらいもある。俳優ばかりでなく、教える側も、新たな発見や学習ができるのが、ワークショップのいいところ。ごく稀に、逸材と出会うこともある。

しかし、1回3時間のワークショップを定期的にやるのは、教える側にとって、時間的な問題もそうだが、まず、体力がいる。しゃべる量も、人間を洞察するために使う脳の量も半端ではない。ワークが終わると心底ヘトヘトになる。事前の準備もいる。

だが、現場の空気に近い環境がつくれるワークショップは、俳優にとっても、演出家にとっても必要な場だ。常に心身を舞台や映像作品へ向けておくという空気がつくられる。

4月までに3タイトル、7本の自主作品制作の時期とも被るが、受注仕事ではない分、まだスケジュールのコントロールができる。忙しい時期ではあるが、ある意味、この時期だから始められるのかもしれない。

一通り仕事の話をして、昨今の映画、テレビ、舞台の話になる。

この間、Norikoに連れていかれた小劇場の芝居を始め、舎弟のSに連れていかれた、まるで火曜サスペンス2時間ドラマのようなベタな芝居といい、小劇場の芝居のひどさは、Oさんも、自身、小劇場をやりながら、感じていたらしい。

テレビは、語るに値しない。映画はテイタラク。そんな状況をOさんの事務所に所属する高齢の俳優さんも感じていて、いい本、いい仕事と出会いたいと願っていると聞いた。

オチャラケだけの作品、客集めだけをねらった作品、個人的な思いだけでつくられた作品…。いずれも人間をきちんと描けてない。人間といものは、社会的存在であるという認識がなく、社会性がかけれなもない作品に溢れている。

それをつくっている人間たちにも問題はあるが、それ以上に問題なのは、観る側の力だ。

この国は、プロデューサー、演出家、俳優をきちんと育てる公的教育機関が一つもない国。それだけとっても、この国の舞台、映画芸術の水準の低さを証明している。公的資金の支援にしても、文化庁の予算執行には、細かなハードルが多すぎる。国策、国政の一環として文化事業を重視するという視点がないのだ。

しかし、コマーシャリズム社会をよしとしてきた、この国のテイタラクを嘆いてばかりいても仕方がない。コツコツ、地道に、いい本、いい俳優、いい舞台を生み出す努力を、心あるクリエーターたちが、続けていくしかない。

次にワークショップをやるなら、そうした志を持つ俳優を育てる場でありたいと思う。