秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

年来稽古條々

会社の登記簿謄本の改訂で、西五反田にある税理士のS先生の事務所へ自転車を飛ばす。

寒い。例年になく2月に雪が舞う寒さ。しかし、昨年秋から年末は、仕事で忙しく、かつ、年末から年始は移転作業もあり、週に4~5回はやっている外苑へのウォーキングも、ストレッチもやっておらず、まして、新作の原稿書きでひきこもりが続いていることもあり、腹はへこまず、自分を諌めるように自転車を飛ばす。

昨日は、夕方近くになって、芸能プロダクションのマネージャーMくんが、新しい宣材資料を持って来訪する。その事務所にいる、女優の内田悠子から、新しい宣材撮影が20日過ぎだと聴いていたので、それを過ぎて、移転祝いでも持参でくるのかと思っていたら、内田の資料は差し替えますからと手ぶらで顔を出す(笑)。

内田の奴、オレが渋谷東急ハンズの時計売り場にある、「渡辺さんの復刻版置き時計」の藍色を事務所にいって、経費でプレゼントするように、伝えておけと強引に指示した指令をMくんに伝えていない。

基本、口数が少なく、怪しい目つきのMくんだから、資料を届けにきただけだろうと思いきや、どうも、オレと話をしたがってる雰囲気ありあり。これは、何か聞いて欲しいことがあるのだなと、書きかけの原稿に後ろ髪をひかれつつ、コレドに誘う。

どうやら、4月くらいに仕事でも、生活でも心機一転したいという思いがあるらしく、手掛かりにワークショップをやりたいと考えていたらしい。

丁度、オレも、秀嶋組に縁のある俳優陣を集めて、ワークショップをやろうと計画しながら、オレ自身の忙しさで、その手配ができていないときだったから、だったら、Mくんに仕切りをやらせてみてもと、あれこれ語る。

別の芸能プロダクションの女性社長さんのOさんからも以前、ワークショップについての計画を練っていたが、なかなか人が集められないということで、中座していた。

どのような形式でやるか、システムとして継続でき、事業としても成り立つようにするには、もう少し詰めが必要だが、事務方としてはきっちりしているMくんなら、俳優にとっても、有益なワークショップがやれるのではと、ふと思う。実は、うちの会社の定款には、俳優養成が謳ってあるのだ。

ワークショップの講師を30代の頃からやっていたこともあり、新しい事業として取り組みたいという思いは、以前からあった。Mくんとは、彼が東映時代からの付き合いだから、なにやかやでもう十年近くになると思う。

こういうふうに、二人で酒を飲み、ワークショップをやろうという話を彼とするとは予想もしていなかったが、これも新事務所に移転したゆえの、新たな出会い。生かさない手はないと思う。

業界は違うが、加圧トレーナーのRさんが、昨夜メールをくれ、オレのHPに掲載しているワークショップレポートを読み、感じるところがあったらしく、世阿弥を勉強したいから読書案内をしてくださいと連絡があった。

秀嶋組俳優陣は、少し見習って欲しいのものだ。レポートを読んでも、自ら『花伝書』を読もう、世阿弥を知ろう、監督に内容について、もっと教えてもらおうと声をかけてきた奴は一人もいない。それは、心から求めてないからだ。

オーディションが少ないだの、大手プロダクション中心のデキレースのオーディションへの不満など、あれこれ、がたがた言うばかりで、いま俳優として、人間として、何を学ぶべきか、学びへの欲求が少なすぎる。

俳優は舞台に立っていれば勉強になるのではない。この間、バレンタインのチョコを事務所に届けてくれた内田にもいったことだが、つまらない本のつまらない芝居に何度出演しても、俳優の技量は上がらない。やっている気になれるだけだ。

確かな指導者のもとで、きちんとした、いい本の芝居に、年1本でも出演する方がはるかに力はつく。それができなえれば、すぐに役立つとは思えないかもしれないが、演技の基礎をしっかり、繰り返し、鍛錬しておくことだ。

大作がないときでも、地味な啓発映画や社会映画にオレがこだわり、つくり続けているのは、そこに監督として、作家として、自分を厳しく鍛錬してくれるものがあるからだ。

修練や鍛錬とは、人が生きていく上で、常に付き纏うもの。

世阿弥いわく、「年来稽古條々」。