秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

恋したら

意図してそうしたわけもないのに、ふと、ある音楽が耳を離れなくなるということがある。

舞台に挿入する音楽やイベントで感動的なシーンを演出するために、記憶の中に格納されていた音楽を引き出し、「あ! これだ!」と意図して引っ張り出すことは、仕事柄よくある。

映像作品でも、自転車で代々木公園からNHKに抜けるあたりを走っていて、ストリートミュージシャンの音楽にふと、胸をえぐられ、作品の中で、使わせくれないかと交渉することもあるのだ。

しかし、そうした意図があってするのではなく、やたら仕事に振り回されているとき、あれこれ会社のことや仕事のことで悩んでいるとき、突然、沸いたように、昔、聴いていた音楽が蘇ることがある。そして、しばらくは、それが耳から離れない。

そして、その曲に癒され、やっぱ、オレって寂しいんだな、などと思いをめぐらす。

最近は、1970年に北山修加藤和彦が作詞・作曲し、グリーメンという男性ハーモニーバンドが唄っていた曲。「恋したら」。

♪恋したら 星の降る夜に 肩よせながら歩くの 立ち止まり 恥かしそうに 二人は互いをみつめる
これからどうするの わたしは眼を閉じるね 恋したら 知らないことは あなたに教えて欲しいの

♪恋したら 口づけかわして 愛しているわと言うのね このときを待っていたけれど でもまだ 勇気がないのよ これからどこへでも あなたに付いていだけ 恋したら 知らないことは あなたに教えて欲しいの

♪これからどこへでも あなたに付いていくだけ 恋したら 知らないことは あなたに教えて欲しいの

ま、最近の若い女子が聞けば、「そこまでシチュエーションできてたら、こちっから行かねぇ?」と言われるだろうし、男子が聞けば、「そんなうぶな子、いまどき、いないっすよ!」と羨望の眼で言われるだろう。

オレたちの高校時代くらいまでは、この程度で恋ができたのだ。いい時代だ。ただ、曲はいい。50年代のアメリカンポップバラードという感じ。本来、その辺の音楽が好きなオレには、まさにど真ん中。スローバラードは、二人手を取ってダンスが踊れる。

実は、最近というか、かなり長く、耳を離れないのが、もう一曲ある。

だいぶ前にベティと「愛を読む人」を観にいったとき、一足早く日比谷につくと、何かのイベントを映画街の広場でやっていて、そこで、アカペラのバンドグループYouが、サザンの「忘れられたBIG WAVE」をやっていたのだ。

これには、思わず、足が止まった。丁度、初夏の頃だったから、なお、心に染みたのだと思う。

今年の夏も海にはいけず、船にも乗らなかった。丁度、この時期、夏が終り、秋に入る頃には、ぴったりの曲だ。夏の大陽で焼けた肌が、秋の風に癒されるように、夕暮れのひどく寂しい波の風景にいるイメージ。きっと海辺で、これを聴いたら、泣いてしまうだろう。

オレにとって、音楽は重要。ある音楽と出会うと、それが小説や芝居の構想やストーリーになったりする。だから、心象をあらわす音楽に敏感なのかもしれない。

メタボの騎士は、いい感じで、きっとお疲れ気味なのだ。