秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

俳優の自由

一昨日、久々に俳優修業中の奈穂が来訪。
 
前回、課題を出していた、セリフの読みの出来具合を見る前に、せっかくだからと、イチョウ祭りを案内する。夕暮れどきなのに、イチョウ並木はやはり、結構な人出。
 
所属する芸能事務所の新しい宣材写真の撮影が来月あり、カットのうまい美容室を探しているというので、これもついでに表参道近くのイワの店を紹介する。
 
舎弟のS、女優の悠子に続き、3人目の客紹介。イワらしく、オレの顔を立て、「いつでも直接呼び出してください」と、丁寧な対応。ありがたい。実際、イワにやってもらった悠子も後日、感動していた。
 
大坊珈琲店でお茶をして、事務所に戻り、課題の読みのレッスンをつける。
 
前回、台本は譜面であり、セリフは音符と、通っている芸術大学の課題、「アンネの日記」を題材にレッスンをつけてやった。
 
そのとき、Yの読みは、まだ文字を読んでいて、音楽になっていないと、マジのダメ出しをした。奴がいいのは、へこむのではなく、そこで悔しさが顔に出るところだ。
 
そこから約ひと月。奴は、ならばと課題にされているセリフを音楽にしたら、どんな曲になるだろうと、渋谷のT屋でCDを視聴しまくり、二曲ほど、それらしきと思った曲を選び、それを聴きながら、読みの稽古をしていたらしい。
 
もともと吹奏楽部に所属した経験があり、いまでもたまに楽器を鳴らしている。それもあってか、まるで演奏者に指導する、指揮者ようなオレの解説が奴には、胸に落ちるらしい。
 
確かに。前回とは比較にならないほど、セリフになっている。ひと月、もしくは、ふた月に一度くらいしか、レッスンを付けてやれない。が、若さというのは、本当に吸収力がある。
 
まだ、与えられた課題をこなすのが精いっぱいで、応用はきかないが、こうした積み重ねを自分なりの工夫で乗り越えようとする精神がある限り、与えたハードルはきっとこなしていくだろう。
 
音楽、音楽、音楽…。演技指導をしながら、そればかりいうオレの意味が少しずつわかりはじめている。
 
長部にしろ、内田にしろ、奈穂にしろ、技能を磨きあげる時間はそれぞれでいい。いろいろな迷いや誘惑、くじけそうな気持ちの中で、芝居にしがみつけるかどうかが、俳優として自立していけるかどうかの分かれ道なのだ。それがあれば、どこかに自分の居場所を勝ち取ることがきっとできる。
 
同時に、ぶれない心根を持つこと。そのためには、よすがになる演技への種がいる。少しでも確かな道をと投げるオレの種を、受け止めるか受け止めないか、それは、奴らの自由だ。