秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

太っ腹のご褒美

東京家庭教育研究所所長の丸山先生に面談に向かう。

3ヶ月に一回程度、監修していただいた、書籍の販売状況やらなにやらご報告にいっているのだが、実際は、それよりも、家庭を取り巻く昨今の問題や政治の話、先生が現場で収集した悩みの声や地方で活動している研究所のメンバー教育の状況など、それ以外のあれこれを話す時間の方が長い。

気がつけば、先生との付き合いも15年以上になる。現状を憂う思いは、いつも一緒だ。

自転車での帰路、携帯に研究所から連絡をもらう。さっきいたのに。何事かと思えば、オレの本の追加注文。本当に、いつも温かい心遣いをいただく。きっと、オレが帰った後、研究所スタッフに声をかけてくださったのだ。

さっそく、最近、どちらが編集者で、どちらか作家かわらない状態の酒豪編集者Rに連絡する。奴は、独立したが、一応、前の会社での仕掛り仕事は、継続してサポートすることになっているらしい。

ちょうど、丸山先生にも、Rが独立した話をしていたところ、「秀嶋さんも、彼女ならやれるって思っているんでしょ?」と指摘される。数回しかRとは面談していないが、先生も、Rのやりぬく体質は見抜いているのだ。「仕事が出来る人よ」。うむむ。しかし、このところは、パニックっている。

案の定、電話すると、Rめ、「あっ!」と悲鳴ともつかぬ一言。かくれんぼしていて、突然見つかってしまった感ありあり。これこそ、まるで、締め切り遅れている作家が、編集者につかまったときの声ではないのか。

「だから、そっちの件じゃなくて…」といいつつ、最後には、一言、さりげなく嫌味を言う。いやぁ、こういう立場も悪くはない。突っ込むだけで、言い訳しなくていいのは、気持ちいい。

丸山先生にも話をしたのだが、クリエイティブな作業のために使う脳と商売のために使う脳は、右脳と左脳ほどの違いがある。20年、会社をやっていても、オレなんか、全然使い分けができていない。それほどに、両方を両立させるのは至難だ。トップでなければ、負担も少ないが、両方をトップでやるとなると、思い悩むことも多い。それを語って理解してくれる人間も少ない。社員や部下、スタッフには話せない。

Rは、いま、きっとその苦労の中にいる。オレの書籍の企画が滞っていても許してやるしかない。オレって、やっぱ、太っ腹? 実際、腹はメタボだが。

しかし、そんな太っ腹でいたからか、ご褒美がもらえるらしい。

この間、Redの常連たちに恐縮しながら、祝ってもらった教育映像祭の優秀作品賞の楯が、もらえるらしいのだ。

いままで、2回も同じ賞を受賞しているが、制作会社に与えられる賞だから、楯や賞状などの類は、もらったことがない。いわば、名誉賞みたいなもので、自分のキャリア、プロファイルとして紹介できるくらいなものだった。それが、現物がもらえるというから、びっくり。

昨夜、昼間の疲れで、11時には寝入ってしまったのだが、以前オレの作品に出演し、いまは引退している、元女優、グラビアアイドルのKが、12時近くに直電してきた。メールでなく、電話なのは、珍しい。何事かと、慌てて出る。

大して急用でもない用件だったのだが、直感的に、へこんで電話してきたのがわかる。が、睡魔に勝てないオレを察して、重要な用件だったらしい片鱗を伝えて、奴は切る。今日の昼、出かける前に、話を聴いてやれなかったことを詫びるメールをする。

それに返信してきた奴に、喜ぶようなメールを返してやる。これも、太っ腹。十年以上前のオレなら、付き合っている女でも寝込みを襲われたら、ブチ切れしていた。

実際は眠さがあったのが救いだったのだ。もう少しで、いつものノリで、「話、聴いてやっから、タクシー飛ばして、来いよ!」といいかけていた。そうなれば、ベットにまどろみ、危ういところだった。これもメタボ気味になった、オレの太っ腹のおかげだ。

太っ腹も、こうしていいことがある。だが、それは、みな、人様に迷惑をかけてはならぬというメタボの騎士の思いがあってのこと。

だが、ぶっちゃけ、ときには、癒しと休息も欲しいと思うこともある。戦い続けるメタボの騎士は、孤独なのだ。

明るいメタボの騎士が、その仮面を脱げる姫や、いずこに?