秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

意地と負けん気を捨てよ

Red常連のコア連中が、ハマやカリスマの発案で、教育映像祭優秀作品賞のお祝いをという話になったらしい。

オーナーYouから先週末に連絡をもらってはいたのだが、どうしたのもかと恐縮していた。教育映像祭の受賞は制作会社に与えられるもので、作品はつくったにせよ、オレ個人が受賞したわけでもない。それに、プロデューサーやキャスト、スタッフあってのこと。

まして、以前にも、オレが監督・脚本した作品は、2度受賞しているし、とりわけ、お祝いというほどのことでもないかと思っていたからだ。

で、お祝いというのではなく、試写会ということにしたらとYouに提案する。

たいぶ前に、撮影でRedを使わせてもらったこともあり、『ケータイトラブル』という東映作品の完成試写会をやったことがある。教育作品だけではと、すかがわ国際短編映画際に招待された『見えないライン』も同時に試写してもらうことにした。そのノリでいこうということ。

昨夜は、そんなこんなの確認をしに、Redに顔を出す。台風の昨日は、客がいない閑古鳥かと思っていたら、そこそこ客がいたらしいのだが、昨夜は、ずっとオレ一人。店が暇なのを見て、メグに料理のレシピーの指導をYouがしていた。

オレがいるからと、Youがお隣のヒロを呼出し、しばらくすると、ハマ、イガくらいしか知らないが、Red変態クラブの隠れ会員、社会保険労務士のSさんが登場。オレと同じ歳のSさん。ヒロの攻撃的ナンパ法ではなく、待ちのナンパ法を伝授。

男は、えてして、イニシアティブを自分がとらなくてはいけないと思う。もともと、そういう本能がある。だから、女性に対して、ドラマの展開をつくり、結末まで用意して、万全の体制で立ち向かおうとする。

しかし、人間の感情というのは、誰かが作った感情の起伏通りにはいかない。まして、女性には、女性特有の生理感覚がある。それを受け入れて、ドラマをつくらないと、物事、男の思うようには進まないものだ。

「ストーリーの結末は、女性にゆだねるんだよ。あれ、これで終わっちゃうの?と、後引く感じを残して、かっこよく手を振る。そうすれば、女性は、終わらなかったストーリーを自分で妄想し、つくり上げようとする。だから、メールもすれば、連絡をくれるようにもなる」。

どうやら、ヒロは頭ではわかっているようだが、どうしても若い性が、ことを急くらしい。

「理屈で、自分や相手を分析しているうちは、まだ、本気の相手に出会っていないということだよ。たくさんの女性と出会っていくうちに、自然と、そうした理屈や分析はどうでもいいと思える女性と出会える。自分が考えていた、図式なんて、どうでもよかったんだと思える人と出会えば、相手の気持ちを第一に考えようという気にになり、戦術や戦略はいらなくなるよ」。

偶然、始まった恋愛指南だったが、ヒロは、いちいち納得していた。学習したいという奴の姿勢がそうさせている。

人は、人のアドバイスを素直に受け入れることが、なかなかできない。オレは、それで、たくさんの失敗と迷惑をかけ続けている。男気があり、負けん気が強い人間ほど、そうだ。

ヒロの姿を見ていて、ヒロの素直さに脱帽。自分が出会ったいまという時間を大事にしている、奴の心持が伝わる。

この歳になっても、まだ、身近な人間の忠告やアドバイスを素直に聞けないオレを、逆鏡で見せられているようで、オレが勉強になっていた。

意地や負けん気だけでは、できないこともある。

押すときも必要だが、潔く身を引き、自分の等身大のあり方をみつめるのも大事。疲れている、オレの姿を見て、Youが気を利かせて、流したダイアン・クラークの湿った声を反芻しながら、そう思う。