秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

陸の上のカッパ

あれもこれもと、仕事がとまっている。

うちの会社は、まるで飲食のノリ。業界的にも飲食と似たところがある。8月は、閑古鳥というのは、オレたち業界でも同じだ。

飲食は、2月も入るのだが、この数年、映画業界は、国内上映で公開できない作品や単館上映でこじんまりとしか、公開できないような映画作品は海外のコンペディションをねらう。秀嶋組のスタッフは、地味な作品が得意だから、コンペディションの提出締め切り前の2月は、結構バタバタしている。

オレは、オレで、人権や教育、社会問題を扱う作品は、5月試写会に間に合わせるように制作するのが年間のタイムスケジュールになっているから、東映の作品や、自主作品の制作などで時間をとられる時期。

結果、7月、8月が基本的に暇。その、時間のある間に、昨年から書籍の企画や執筆、映画・小説の企画、台本制作などを織り込むようにしている。が、7月が、書籍の企画と官公庁の企画で時間をとられたものの、書籍は、出版社の返事待ちになっているし、官公庁の企画は初参加ということもあり、敗北した。

その合間に、自社企画やタイアップ企画を進めたいのだが、お盆がくる。結局、打ちあわせに入れるのは、8月後半。今年の夏は、気のせいか全体的に動きが遅い。

現場にいるか、書き物をしていないとへこむ。オレはつくづく、物づくりをしていないと「陸の上のカッパ」状態なのだなと思う。書かなくてはいけないものは、たんとあるのだが、目の前に、社会貢献というにんじんをぶらさげられてないと、馬車馬のように走れない性格。

物書き・絵描きの卵、Mちゃんが、にんじんも見えないのに、ひたすら物づくりに励んでいる姿は、立派というしかない。

うちの会社は6月決算。今年は早めに資料を上げたが、これも長い付き合いの税理士がお盆休みを早めにとってしまい、決算書が出るのが例年と大差なくなってしまった。売上げは落ちているが、なんとか、大幅黒字に転換。やはり、この数年取り組んできた、自主作品制作は大きい。

それだけでも、ありがたいことなのに、人間は欲深い。その次、また、その次の次とあれこれ思いをめぐらせてしまう。

なにやかにやと、自分が思い描いているタイムスケジュールとおりに動かない夏。これも、あたらな学習をさせられているのかと思う。シュミレーションどおりに動かない中で、平常心を保てるかどうかの試練だ。

段取り仕事をする人間は、押しなべて同じだと思うが、自分が頭で描いているストーリーが、描いたとおりに治まると、安心なのだが、それがくずれると、いらいらや不安が募る。とりわけ、何か目標や目指すものがあると、特にそうなる。

物事が動くときは、本当に動く。動かないときは、テコでも動かない。その現実を受け入れて、いまできることにひたむきになるのためには、心の強さがいる。

この数年は、本当にいい修行をさせてもらっている。いままで出会えなかった気持ちといっぱい出会わせてもらっているからだ。仕事でも、プライベートでも。

それも実現したい作品への思い、実現したいライフスタイルがあるからだろう。同時に、その欲深さゆえの、たどりつくための試練とも出会っているからかもしれない。

「陸の上のカッパ」状態も、それを思うと、オレにとっては悪くはないのかもしれない。