秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

Rの独立

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博報堂のYさんがバンマスのライブに顔を出す。

六本木の地下にある、ファースト・ステージ。アマチュアジャズバンドの稽古場兼ライブハウスとなっているところ。アマチュアジャズ界では、知る人ぞ知る聖地だ。

集っているのは、大学のモダン・ジャズ研究会出身の団塊世代が中心。学生時代、学生運動で火炎瓶を投げて、パクられたおじさんたちやノンポリを決め込んで、ひたすらジャズをやっていたおじさん、おばさんなど、様々。

しかし、ジャズなんてものをやり、いまも続けているくらいだから、精神的には結構、自由人。で、キャリアもそこそこ高いので、とても常識人。いまや企業のえらいさんになっている人、退職後、えらいさんで迎えられた人、会社経営者など、それなりの立場にある人やその奥様連中が多い。

だが、そのレベルは、アマチュアながら相当高い。気合を入れたときの演奏は聴き応えがある。普段は、酒と雑談、バカ話で盛り上がっているから、その落差がいい。ジャズをやろうという連中だから、どこか陽気で、心根がやさしい。オレの嫌いな団塊世代の中で、オレが噛み付かない貴重な連中。

そういえば、オレが大好きなマエストロのSさんも、音楽関係といえば、そう。オレは、音楽系団塊世代には、やさしいのかしら…。

もう3年ほど前、オレの映画にコメント出演したもらった、某外資系著名楽器会社をリストラされていた頃のYさんが、博報堂の契約で再就職が決まり、落ち着いたらメシしようと声かけあっていたので、TBSやその下請け制作会社などの連中がよく来る、赤坂の中華屋でメシをしていた。そのとき、突然、Yさんに、秀嶋さんは、ジャズとか好き?と聞かれ、拉致されるように連れていれたのだ。

オレは中学時代からちょい変っていて、ビートルズばやりの頃に、ボサノバや50年代アメリカンポップに嵌り、高校に入るとロックで盛り上がっている仲間に付き合いつつ、実は、ジャズに嵌っていた。当初、映画ネタになればと、取材のつもりで通い詰めていた。で、普段知り合うこともない、わが国のアマチュアジャズ界の往年の演奏者たちと出会ったというわけ。

この間、息子の合格祝いをRedでやったとき、参加してくれたのも、Yさんのバンドの男女ボーカリストと学生ジャズ界のカリスマといわれたベースのSさん。たいした出会いでもないのに、そんな気遣いをしてくれる。

昨日のライブは午後2時から6時まで。Yさんのバンドの合間に、順番にジャズ好き連中が適当にセッションし、ボーカル好きな女性たちが歌う。基本、オールド・ジャズやオーセンティックなジャズ。日本では少ないが、ジャズ好きな中高年の男女がジャズやボサノバ、アメリカンポップの実演を楽しんでいる姿は、いつも思うが、美しい。

まだ、具体的な映画や小説の構想にはならないが、こうして、アマチュアジャズの中高年の姿を見せられているのには、何かわけがあるような気がしている。パズルのひとつを見せられているような気がしているのだ。何かの拍子で、ほかのパズルと組み合されれば、彼らを題材にすることが、いつかできるような気がしている。

いつも反省会と称して、二次会の飲み会があるのだが、少し遅れてきた、酒豪編集者のRと話があり、詫びをいって、みなさんと別れ、西麻布の鶏繁で、焼鳥を食う。

実は、R、今月一杯で退職し、独立する。出資者がいて、新しい出版社を8月から立ち上げる。実は、少し前から知っていたのだが、奴には知らんふりをしていた。で、どうなの? と事情と決意のほどを聞く。奴も、失敗した経営者のオレの体験に興味があるらしく、珍しく教育的指導を求める。普段は、どちらかというとオレが奴から、編集者として教育的指導をもらっている。

仕事のできるRは、仕事でこけることはない。ただ、人を使う立場になれば、それなりの苦労が伴う。何でも器用にこなせる奴の負担が大きくならなければと思う。が、Rのような人間には、いい経験になるはず。きっと、益々、強力な仕掛け人になるだろう。その素地が奴にはある。

オレの作品にとって、かけがえのないアドバイザーだし、プロデュサー。奴の成長は、オレにとってもありがたいのだ。

何かとバタバタだろうが、苦難と壁に強いR。やると決めた以上、やるしかないし、やれるところまでやってみて、考えればいい。

オレは、いつもいうが、可能性を考えるのではなく、それを実現するために、いま何をしなければならないかに、徹底することだ。しかし、執着はしないこと。これは、オレにもいえることだが、こうしたいということへの執着が強すぎると、現実を冷静に見る眼が曇る。

すべての困難の要因は、人の人への執着や物、仕事への執着。それがなくては、理想を実現することはできないが、眼が曇るほどの執着はよくない。周囲の状況や人心が見えなくなるほどの執着は、イライラや怒り、意地や見栄、体裁のもととなる。

それを自覚できなくて、オレはあれこれ失敗してきた。もっと早くにそれに気づければと、いまでも思う。

執着をコントロールする術を覚えれば、道は拓ける。