秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

よろず相談屋さんのものづくり

土曜日の夕刻 酒豪担当編集者のRと本の企画の打ち合わせで 焼鳥Yoshiで飲む


金曜日 結構深酒し 完璧な二日酔いで どうしたものかと頭をよぎったが

なにせ いい企画だろと最初にあおったのはオレだし あれから一月近くになっても

よろず相談ばかりで 27日に撮影した 教育作品の台本以外 このところ書き物の仕事をしていないオレ

は 負い目もあり そんなことは奴にいえないと 夕方直前まで眠って 外苑前へ

結局 一枚の企画書も渡せず 何ら進捗していない状態に

オレのブログを読んでいるRは 「よろず相談ばかりっていうのも どうよ 少しは仕事しろよって い

いたいところでよね」と大笑する ま 冗談ですけどねというふりして きっちり いいたいこといって

るじゃん!


前回の仕事で オレの企画書や初稿の上がりがあまりにすばやく 期限通りだったから いつも筆の遅い

著者に苦しんでいる奴にすれば 期限を守るいい著者だと思っていたのだ それが今回は どうやらそう

ではないと気づき始めてしまった


で ごまかしたわけではないが 金曜日の夜に助監督のKさんや舎弟のTと話をしているうちに すらす

らっと浮んでしまった 小説 映画の企画の話をすると 

「実は それ 私も考えていたんですよ」という

主人公が男か 女かの違いはあるが 奴が構想していた企画とぴったりだったらしい

「それ おもしろい」ということになり ひとくさり そのストーリーのあるべき姿について話し合い

オレが ちょっと向田邦子のタッチだけどなというと うむうむと頷く

オレが一番 怖れている女流作家は向田なのだ などと話しながら よきことに その本の企画は 口頭

ながら 大筋まとまったし 整理もできた


こういうふうに ふと浮び だれかに大筋を話して共感してもらえる構想は ほぼいい本になる

浮んだときに だれがいいといっているわけでもないのに がつんとした手ごたえがあるのだ

これは 芝居や小説 映画 それ以外のイベント企画やプロデュースにもいえること

よく 何かが降りてくるというようなたとえをするが たしかに 普段なら すっと自分の前を過ぎって

それに気づけないのだが そのときの個人的事情や出会った風景 物 人などから 

通り過ぎる一瞬を見逃さす シャッターが切れるときがある

物書き ものづくりをする人間には 不可欠な動物的といってもいい 直感のようなものだ


以前Rの出版社から出した本もそうだったし いまRとやろうとしている評論本も同じだ

というか オレがこれまでつくってきたものは 芝居でも 映画でも 他の仕事でも ほとんどそうした 
目に見えない何かを感じてつくってきている

逆に そうした触発や自分の自発的は発想が最初になく お仕着せのこうしてくださいふうな仕事や机の

前であれこれ考え込んでしか浮ばないものは 大したものではないし できもよくない

流れ作業のように 創作の仕事をするなら それはそれで別の道 別の表現者としての生き方がある


いろいろと事情はあるにせよ やりたいもの 書きたいもの 描きたいものを世に問うというのが ある

べき姿だ

もちろん そこには技術や技量 能力や経験といったものは必要だが 人を深く見る 知るという努力を

怠っていなければ また その感性があれば それなりにはなる ならないとしたら 人を 自分を深く

みつめるということをしていないから 

ものづくりは修行なのだ


オレが人の相談やだれかのことで奔走したり 心配しているのは その人のためにできることがあれば

という思いもあるが 他者の心の奥にあるものを 実は 取材するという貪欲さの裏返しでもある


このところ忙しく おそらく4月中盤以降でないと上がらないが 5年前から仕事の合間合間に書いてい

る小説があり 実は それもRにまかせたいと思っている 200枚程度のもので半分は終わっている


オレの頭の中では Rと約束している企画書があり さらにその小説を挙げる作業があり 来年再演した

い芝居の手直しとそれを映画化するためのシナリオ作業があり 金曜日に浮んだ構想をどの表現でまとめ

るかを決め それを形にするという作業があり その間に舞台上演の手配やら 映画化向けた資金集め

やらとあるのだが ふと気づくと 全部 どこかの会社から受注を受けるものではなく こちらから提案

なり 作品を持ち込むものばかりだ


自分の仕事のスタイルが10年前とは ずいぶん変わっていると思う


そうこうしていたら RedのYouがオヤジさんの使いで店に顔を出し じゃ飲んでいこうよと3人で飲む

そのうち オレの映画をつくるために Red常連で基金をつくりたいとYouがいいだし Rはいまやろうと

している書籍の原稿を Redでオレが 下ネタ 恋愛 結婚 子育て 政治 経済 日本近代とテーマを

変えて フリートークショーを定例でやれば さらさらとつくれてしまうのでは と言い出す


えっと ちょい慌てながら それも悪くはないと考え そこそこ飲んでみんなと別れた

残ったのは やはり Rの宿題という結末


土曜日は撮影が終わるからと Mちゃんと飲もうと話をしていたのだが Mちゃんの方から無理しなくて

いいといわれ 丁度 Rとの打ち合わせも入っていたから では 今日の日曜にでもと連絡していた

が 土曜日にどたきゃん

どたきゃんはいいのだが 繊細な物書きのMちゃんは また何やら悩んだり あれこれ面倒なことに巻き

込まれているのではないか と心配になる

結局 日曜も部屋で仕事をしていたのだが Mちゃんから渡されていた原稿を読んでおらず 仕事も夜に

片付いたところで 作品を読ませてもらう

短編1本だけだから なんともいえないが Mちゃんワールドが垣間見えた また Mちゃんが目指そうと

している方向性もぼんやりだが わかった

メールでは いまはなにから ありそうだったから Mちゃんと作品について話すのは 少し待たなけれ

ばいけないかもしれない

表現者であることが ときとして 重いことがある 感受性が強すぎ それを調整できない繊細なMちゃ

んは 特にそうだ

よろず相談屋さんは 歳をとっているから 何とか調整できてはいるが…