秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

ハンドルの遊びからポロリ

雨が来ないうちにと、午前中、代官山の編集スタジオへ
 
自主作品の最後、「女性の人権シリーズ」のDVD加工への最終調整。編集のUくんがちょうど、外の踊り場でタバコを吸おうとしている。オレの姿にタバコをしまいそうになる彼に、「いいよ、ゆっくりで」と、喫煙タイムをあげる。
 
Uくん、もともとオレはタバコを吸わない人だと思っていたらしい。
 
確かに。編集スタジオはもちろんのこと、東映にせよ、どこにせよ、会議や打ち合わせに出向けば、いずこも禁煙。喫煙所のない会社もいまは少なくない。おかげで、やむなく半日タバコを吸わないということに耐性ができた。だが、以前はその反動で、オフィスに戻ると、あっというまに一箱空けるということもザラ。
 
それがすっかりなくなったのだから、まさに、Uくんの指摘は正しい。
 
作業を指示して、ちょっと気になっているスタジオの道を挟んだビルの1Fにあるレディスの店をのぞく。とはいっても、まだ開店してない時間。
 
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マネキンの奥にある、白のノースリーブのワンピーの露出度もなかなかいい 女は露出を上品に操れてこそ、一流の女。
 
「女性の人権」を語っているカントクとは思えない言葉だと思うアホな輩がいるだろうが、男が男の度量を、女が女の器量をなくしてしまったから、互いの人権を尊重する基盤が失われてしまったのだ。
 
この界隈には、岡山のジーンズメーカーがやっている「OMNIGOD」というオレ好みのショップもある。夏の新作を見たかったが、時間が早過ぎた。
 
このところ、映画のテスト稿の件で、考えることもあり、月末の会社の経理事務や営業の組み立ても考えねばと、経営者として頭を悩ますこともありと、どうも落ち着かない。明らかに自主企画をやっていたときより、集中力が落ちている。
 
が、しかし。昨夜、BSでダーティ・ハリーを見ながら、ふと、映画の企画の解決策が浮ぶ。脈絡はなにもない。
 
オレたちの脳は、本当に不可思議で、おもしろい。何かに集中していると、みえてこないものもあれば、がつんと集中して疲れ切って、もうダメと、ふと力がぬけたときにみえてくるものもある。
 
また、昨夜のように、まったく別のことをやっていて、考えていないようでいて、ふと物が浮んでくるときもあるのだ。
 
人には、遊びが必要。オレのいう遊びとは、何度か語っているが、車を運転するときのハンドルの「あそび」のことだ。実際にタイヤを動かしているハンドルの動きではなく、左右どちらともつかない、始動する前後のゆとりのことだ。
 
レーシングカーのようにガチガチに固めたハンドルでは、身体能力が重要だが、思考や発想を使う脳が働かない。動かさないようにカーレーサーはトレーニングする。考えていたら、コンマ何秒というタイミングに身体が反応できないからだ。
 
だが、発想は、それでは浮ばない。一見意味のないように思えるハンドルの遊びには、脳が働く前の隙間がある。実は、物づくりには、この脳の働きからいえば、論理立てもできず、意味も不明で、方向性もない、無のような時空が必要なのだ。
 
昨夜、そのハンドルの遊びから、ポロリ。そのまだ形にもならない、ポロリに、思わず涙が溢れそうになる。物語の大事な場面が映像の画面で断片的に浮び、それだけでひとり感動している。
 
だれかが見たら、ヘンな人。それが、オレの仕事。