秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

了を打つとき

つまらなくなったテレビ番組の中にも たまに 宝物をみつけるときがあります


台本の締め切りに追われているというのに

他のことをやってしまうというわるい癖があり

気分転換のつもりつけたテレビで

今年の3月に放映された「東京大空襲」が再放送されていました



98年に広島アリーナを主会場に、沖縄、長崎、広島を

いのちのバトンで結ぶというイベントをプロデュースしたことがあります

ぼくにとって 沖縄は、自分が一市民として

なにがしかのメッセージを社会に発信することの大切さと

明治以降の日本が置き忘れてきた 日本近代の矛盾や不条理性を

高校生のぼくに最初に、わかりやすく、きちんと

歴史と論理と 心情で教えてくれた最初のものでした



以来 国内における初の地上戦 沖縄と

世界における初の被爆国となった広島 長崎は 

ぼくの社会メッセージの大きなファクターになりました

ぼくが演劇の世界でやってみようと思うきっかけになり 賞をもらった処女戯曲「あの河を泳ぎ抜け」は

福岡大空襲によってうばわれたいのちのメッセージが大きなテーマになっています

東京大空襲の資料はちょうどその戯曲を書いた二十歳のときに

創作の資料として読み、知っていたのです

そのとき この国の大都市を焼いた焼夷弾の悲惨を学び 

体験者である母から当時の話を聴き

そのとき起こっていたベトナム戦争で 

いまでいうクライスター爆弾、ナパーム弾によって同じように

罪なき人々のいのちが奪われている現実に憤りを覚えました


愚策な戦争によってもっとも理不尽な被害を受けるのは 高齢者や女性、子ともたちです

そして、もし生き延びたとしても、その心の傷は生涯つきまとってしまいます。

それはいかなる戦争においても同じです

人が対立し、憎しみ合い、傷つけあう世界、社会は決して人を幸せへは導きません

暴力でなければ、武力でなければ 対立や紛争は解決できないと考えるのは

愚か者のすることです

そして、一部の愚か者によって 戦争は引き起こされ

その一番の犠牲になるのは 声を発することも許されない人々です


国防だ、軍事も外交だと、かっこいい理屈を組み立てることは 簡単なのです

とても大変で むずかしいのは 武力や軍事に頼らない外交 国のあり方なのです

むずかしいことではなく 簡単な道を選んだ結果 いくつもの戦争が生まれるのです


しかし 胸を張り、威勢よく国防 愛国 国家の尊厳をぶちあげる

かっこよさは 人を酔わせます

それに酔ってしまった 世界を知らない おバカたちが まだ この国にはいっぱいいます


だから だれかが そうした人たちとは別の道を

むずかしい道を歩まなくてはいけません


そのために必要なのは むずかしい道を歩める心をぼくらがつくることです


「戦争のために砦を築くのではなく 戦争をしないための心の砦を築こう」と語った人がいます


対立や紛争からは何も生まれないことを知り

同時に 自分が普段の生活の中で 人をうらみ にくしみ 嫉妬し 憎悪してしまう心を認め

それをどう乗り越えるかに挑戦しつづけるしかないと ぼくは思うのです


年末年始が近くなり 昨日もSONYの大量解雇のニュースが流れました

年末年始にテレビを囲み 一家団欒の時間を過ごすゆとりのない人も増えています

そうした社会のあり方に そうした当事者はもちろんですが

そうではない人も他人事ではないという危機感を持ち

きちんと異議をとなえることは大事ではないでょうか


声をあげず 隷従すれば その心に社会への憎悪がたぎります


その憎悪を愚か者たちに 対立や紛争の道具として利用されないために

威勢のいい 国防論者に あの悲惨な戦争への道を拓かせないために

自分の生活 生き方の中で できることを始めなくていけない気がします


前にも述べたように

もう 調子のいい演説や人気や勢いにまかせた政治ではなく

これまでとはまったくちがったスタイルとデザインの生活、社会へ

ぼくらは 了 (終了)を打つときが来ていると思います



そんなこんなを考えている中で 台本書き進めていたら

とりあえず ぼくも原稿の最後に 了を打つことができました。

二週間ぶりに爆睡しました…。