秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

おかしな地図

NHKを始め、熊本地震の報道。違和感を感じた人はいないだろうか。

九州にいる人間はなおさらだと思う。九州全域で揺れが起きているのに、鹿児島県だけが報道の九州地図から抜けていることさ。

天気予報でも、台風情報でも、九州地域の状況を示すときには、全九州地図を表示する。なのに、今回の地震報道だけが、鹿児島がないんだよ。

鹿児島が揺れてないことはない。気象庁のデータでは、鹿児島も福岡や佐賀、長崎と同じように震度4、3、2といった揺れが出ている。なのに、なぜ、鹿児島だけが地図から抜けているんだろう。

鹿児島県川内市川内原発が国内で唯一再稼働したことと無縁じゃないとぼくは思っているのさ。

今回の地震災害の名称。「熊本地震」にぼくは違和感を感じた。震源地は熊本だったけれど、震災は広域に及んでいた。14日のあと、15日の震災は、もっと全九州に及んでいる。マグニチュード阪神淡路並、震災の影響は全九州に及び、熊本県以外でも負傷者や死者が出ている。

命名するなら、「平成28年九州地震」が正しいはずだ。

報道もほぼ熊本県内の被災情報が中心で、大分県内でも起きているがけ崩れや道路の崩落など報道していない。報道したとしても、由布市くらいで、他はアナウンスだけで映像取材はしていない。

今回の震災の関心を熊本だけに集約して報道しているとしか思えないんだよ、ぼくにはね。確かに、いま一番の対応は、被災者が多い熊本が第一だけど、もっと俯瞰してみないと、今回の震災の姿とこれからの対策は見えてこないような気がしている。それをやるのが報道だとぼくは思う。

もうひとつは、自衛隊のヘリやオスプレーではなく、米軍の申し出で、米軍のオスプレーを物資搬送に使いはじめたことさ。米軍の支援はいいとしても、なぜ、ここにきて、物議をかもしているオスプレーが出てくるのか。

あまりに唐突で、それゆえに政治の意図を感じてしまうんだよ。沖縄の基地問題のひとつの象徴となっているオスプレーを救援に使うことがね。

だれであれ、人が困窮し、苦難にあるとき、そこにかかわる上で、大切なのは、単純明快であることだとぼくは思っている。不安を抱かせてしまうようなこと、疑念を持たせてしまうこと。そうしたことは、困窮にある人をより不安にさせる。不安にさせるだけでなく、利用していることになるんじゃないだろうか。

そればかりか、支援する人々の心にもAIDという本来の目的から離れた、政治的な立場や考えをもたげさせ、対立を生ませてしまう。バラバラにしてしまうんだよ。

いくら、その方が効果的だとか、便宜上都合がいいとか、理屈はあったとしても、AIDは、それらからできるだけ遠くで、純粋、明確に、かつ無名性の上で、何かの意図でやるものじゃない。だれもが納得できるものでなくてはいけない。

そんなところで、政治はいらない。原発推進も反対もない。基地容認も反対もない。選挙も関係ない。それらは、じつは現場では何の力もない。ぼくが東日本大震災で福島、石巻を回ったときの、それが実感なんだ。

だとしたら、だれもが同じように情報を共有でき、だれもが同じように納得できる情報を提供すべきなんじゃないだろうか。

そして、川内原発は正常に稼働しているというコメントだけじゃなく、また影響は受けていないという説明ではなく、二次災害、三次被害を生まないために、とりあえずは停止しておく。それが、ごく普通の対応だろうとぼくは思う。

政治にも、個人にも、団体にも、余剰や余計は、排してほしい。ただただ、真摯に向き合ってほしい。また、憐憫や情に流された心情だけでなく、涙を心に溜めながら、冷静で、確かな外科医のように、いのちと、人々の心と対峙してほしい。

おかしな地図は、ぼくらの心、日本人の心までおかしくしてしまうんだよ。