秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

日常の白蟻たち

人を疲れさせるもの。それは重い仕事だろうか。人から、気力やがんばりを奪うもの。それは満たされない望みや成果、期待のためだろうか。
 
いや。そうではない。
 
人を疲れさせるものは、人の世の悲しさだ。人の世の不合理さや不条理さ、場合によっては理不尽さだ。

志や理想のない人々。理念や普遍性を求めない人々。本当の平和や本当の幸せとはなにかを自らに問わない人々。自分たち人類や先輩たちが犯した過ちを過ちと反省できない人々…。
 
鈍感で、無知な、そうした人たちがつくる、息苦しい世界。勝ち負けや物質的な豊かさでしか物事をとえられない世界。

制度や仕組みをつくれば、この世の理不尽さや人間同士の邪な対立が解決できると机上でしか人をみられない世界。

権威や名声にあこがれ、頼り、名もなく、つまいしい日々のつましい人々から何も学ぼうとしない世界。

それは、人々から明日への希望や理想を奪う。誇りを抱き、未来へ向かって苦難の中でも歩もうとする意志と意欲を奪う。

オリンピックにはしゃぎ、都市のさらなる開発にはしゃぎ、自分たちが見捨てている、たくさんの日常をふりかえらない。

 
たとえ、重い仕事でも、たとえ、権威や名声とほど遠い毎日でも、明日への道を進む希望と理想があれば、人は誇りを持ち、決して、疲れることはない。

志や理念や理想のない人々が、権威や名声にばかり目くばせる人々が、明日を拓く本当の力を、明日を創る、普遍性のある理想を食いつぶしていく。

政治の世界で、詭弁とまやかしばかりが平然と歩いている。そして、志や理念、理想のない人々が、権威や名声にしがみつく人たちが、同じように、詭弁とまやかしの日常をつくっていく。
 
それは、日常とはいえない。自分たちの村や町、地域のあるべき日常を食い物にする日常の白蟻だ。
 
だから、人は、白蟻たちにこわされていく日常の中で、あるべき日常を回復しよとして、疲れていく。