秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

贅沢な時間

昨日はお彼岸法要のあと、その足で広尾の某隠れ家バーのプレオーブンへ。

「駅からずいぶん歩くから」とは聞いていたが、独立してすぐ、いまから24年前、明治通り沿いの広尾一丁目という恵比寿駅と広尾駅の間くらいのところに事務所を持った経験からすると、それほど遠くには感じない。
 
慶應幼稚舎の校庭の桜をひとりじめにできる広いテラス。内装を黒と間接照明でまとめた室内。軽く20席は儲けられるスペースにカウンターとテーブルひとつだけの6人限定予約の店。
 
開放的な半面ガラス張りの空間は、多少、いままでより金を払っても、それに見合う落ち着く空間と時間をくれる。気の合う奴と酒を飲みながら、ゆっくり語り合うには最高の空間。
 
おそらく、プレオープンに顔を出した、テレビ・映画関係者やこれまで店に馴染みの俳優、制作関係者、それに、オーナーのMさんつながりの人の限られたくつろぎの店になっていくのだろう。

親密な人との時間にはいい。濃密な時間をつくれる。女性だけではない。ふと息子と二人で来たいと思った。
 
この空間には、どこかに家族といたいと思わせるものがあった。あるいは、家族同様に一緒にいられる人といたいと思わせるものがある。
 
気遣いもなく、虚勢もなく、気がねもなく、かといって、喧々諤々、いいたいことを言い合うというのもでもなく、心の奥にある本音や本心をゆっくり語り合う…そういうふうにいたい空間。

店に入ってすぐ、ここは、Mさんにとって、おふくろさんの胎内なのだな…と思った。
 
オーナー自身が一番落ち着け、安心できる場所。だから、居合わせた私にも、ふと息子といたいと思わせたのだと思う。あるいは、それくらい気兼ねなく、親密でいられる人といたいと思わせたのだろう。
 
その中でなにかが育ち、その中から何かが生まれる…そんな空間にMさん自身したいのかもしれない。店の壁面にはMさんの母君、祖母君の写真がある。
 
人のふりみて、自分を振り返ったら、私の事務所の壁と出窓のスペースにも、おふくろの写真が2点も飾ってあるw そして、私もここで本を書き、スタッフと制作会議をやり、たまに事務所飲みをやっているw
 
彼岸の中日にそうした店の新規開店の時間を過ごす…不思議なものだ。
 
いま最後の英語字幕作業に入ってる作品は、被災地の問題を扱ってるが、母との別れが縦軸になっている。じつは、私自身の亡くなった母への思いも入っている。スタッフがラストシーンの撮影で、2月の浜風に震えながら、胸が熱くなったのも、それぞれの母への思いがあったからだと思う。

すぐに近日の予約をしたいところだったが、その英語字幕の最終の詰めの作業といわき行きで、4月までその時間は持てそうにない。
 
4月にはいったら、すこしだけ、そんな贅沢な時間をだれかと過ごせたらと思う。