秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

世界的な立ち位置

参議院選挙の世論調査で、自民党の圧勝、公明党議席確保、共産党の躍進が予測されている。
 
当然ながら、民主党みんなの党、維新の会、社民党、生活、みどりといったところは、苦戦。民主党に至っては、結党以来の惨敗、党そのもののを維持することすら厳しい情勢が濃厚。
 
同時に、20代、30代の投票率の低下が拍車をかけそうな情勢だ。
 
おバカな年配は若い奴らの政治への無関心は困ったものだ…などとアホなことをいっている。マスコミ・行政はいまごろになって、選挙へ行こうキャンペーンを張る。選挙直前にキャンペーンなどやって、効果があるとほんとに信じているのだろうか。
 
政治や選挙に人々が無関心なのではない。愛想をつかしているだけだ。
 
既得権や利権に結びついた既成政党はもちろん、いつも鳴り物入りで登場する、一時の勢いだけに力を借りた新党の脆弱さやどこかヒステリックな市民政党にも、飽き飽きしている。そして、それ以上に政治家の言葉が若い奴や人々の心を動かさない。動かす言葉がない。心に届く言葉を知らない。

もっといえば、人々はいまの政界に、尊敬と信頼に値する政治家がいないと見抜いている。共産党の躍進は、受け皿が野党にない中、共産党だけが反自公を明確にし、ブレていないからだ。
 
自民圧勝と公明党議席確保は、単純に組織票固めがしっかりできているから。投票率5割か、それに満たない選挙になれば、当然ながら、組織票を持っている政党が強い。政権交代のときは、このあるべき組織票が自民を見限った。さらには、浮動票が動いた。
 
組織票が確実に当てになり、浮動票が全く動かない。そして、政党政治に飽き飽きしている若い世代やその他の浮動票層は投票にいかない。そうなれば、当然ながら、地方組織のしっかりした既存政党の自民と結束の固い学会票を持つ公明党が強い。だが、実際のところは圧倒的な支持で自公連立政権が支持されているわけではない。
 
選択可能な選択肢がない時代。投票率の低下の根底にもそれがある。受け皿になってくれる政党や政治集団がないとき、人々はとりあえず、無難な選択をするしかなくなる。
 
もちろん、積極的に支持にまわり、組織票のひとつ、コマとなる人たちもいるだろう。だが、自民支持の内部を冷静に検証すると、自民支持者自体一枚岩ではない。護憲派もいれば、改憲派もいる。しかし、いろいろな意見や考えの違いという多様性があっても、それをとりあえずひとつにまとめ切れる自民党にしておくのが無難という声が結構聞こえてくる。

つまり、憲法改正に反対でも、原発再稼働に反対でも、また、株価のつり上げで虚構の景気のよさに問題を感じていても、それを内部で牽制し合ったり、抑止してくれるだろう。そのことで対立することはあっても、民主のように内部紛糾を起し、政策決定ができないという最悪なことは起きないだろうという期待だ。

多数決は民主主義の原則であると同時に反民主主義でもある。しかし、とりあえず、多数派で政治を動かしてもらわないと淀んでしまったいまの政治を前に進められない…そのしごく、単純で当り前の動機が政治のパワーゲームの要になってしまった。

とどのつまり、その政党にも大衆に対して、明確で知的で希望や夢、未来を予感させる言葉と思想がないということなのだ。日本を取り戻す…おそらくは電通など戦略会議で生み出した言葉だろが、取り戻そうとしている懐古的保守主義では何も生まれない。
 
おそらく、この2年の間に、物議をかもすいろいろな課題と問題が消極的で、撤退主義的な選択のツケが大衆に押し寄せてくる。そのとき、やっとこの国の人々が自分たちの国が抜き差しならない状況に立たされていることを世界的な立ち位置において知るだろう。