秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

大きく舵を切る

いわき市の震災による死者は455名。内、不明のまま死亡と認定された方は、37名。福島全県では、1607名。

死者不明者の数は東北三県の中ではそれでも一番低い。だが、福島では、これに原発事故による避難が加わる。その影響は大きく、震災関連死は、1660名。震災死の数を越えている。
この数は、東北三県の中で圧倒的に福島が多い。
 
震災孤児・遺児の数は、福島県が一番低い。震災孤児21名 遺児139名。だが、震災関連死にみられるように、仮設・借り上げ住宅での生活の中で、地域のつながりがなくなり、社会資源、つまり公的サービスの活用の道が途絶えた。
 
結果、家庭内で自己完結型の生活が続き、家庭内が濃密な場になることで多くの問題が生まれている。子ども、女性、高齢者への虐待の増加はそれを示す。

絡んだ糸をとくのは、人の力、地域のつながりの力だ。あるいは行政の支援だ。だが、多くは、震災による復旧復興事業へ多くの金と力が投入され、いわゆるインフラやハードの整備だけが先行している。

また、風評のために起きる経済基盤の回復を優先している。物販や観光には金が潤沢に投入されるということだ。そこには、最近問題になっているように、水増し清算や名目だけの助成金流用という悪事も生れ、潜んでいる。

また、助成金や支援事業は、名目や名義といった建前がないと行政を通らない。形にするものがないと金が下りないということだ。そのため、見えないものへの手当てが行き届かない。
 
たとえば、ひとつの福祉施設をつくる助成金や支援事業は動く。だが、その福祉施設を維持管理し、かつ、福祉というソフトを構築していくための助成金や支援金は容易に下りない。
 
ここにも、福祉という名目で、うまく助成金や支援金をもらうことだけを目的としている怪しい輩もいなくはない。
 
やるべきことの本質を国政、行政がみていない。また、そのみていない現実を小賢しく利用するエセ被災者も存在する。
 
だからこそ、いま、それを点検し、地域や地域の人々にとって、本当はなにが必要なのかを見直すときがきているのだ。

来月実施する映画の上映会は、意図しない中から生まれたものだが、私は、これを起点として、これまでの福島とのかかわりを大きく見直そうとしている。また、その思いを触発させてくれるものや人との出会いもあった。

なにかに誘われるように…。それは、最初にいわきの被災した海岸と出会ったときもそうだった。そして、いま、また、同じように、なにかに誘われるように、私は、大きく舵を切ろうとしている。