秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

日本人が目指すべき方向性

昨日の徳島県つるぎ町でのいわき市の被災地を取材した「失われたいのちに誓う」の上映会とトークショー…。実に話しやすかった。作品の上映中は、やはり、すすり泣く声があちこちで聞かれた…。
 
司会を自ら買って出てくれた、あい・ぽーとの理事長Fさんの質問の内容も的を得ていたし、展開もオレがもっとも語りたいポイントを実に簡潔に突いたものだった。世界観が広い。だから、話やすい。
 
聴衆は、地元のシルバー講座に通っている中高年、高齢者の方たちばかりだったのだが、会場はほぼ満席。そうした方たちに伝わるようにと配慮した話の運びは、やはり、地元に生活しているFさんならではだな…とお話をしながら感じていた。
 
それに、会場にいたみなさんが、実に熱心にオレの作品を視聴し、その後のトークショーでも耳をこらすように話に聞き入ってくださった。つい熱くなって語ってしまうオレだが、その言葉の節目に拍手が起こったというのは、いろいろ講演やトークショーをやってきたが、初めてのことではなかっただろうか。

なんでも、地元のシルバー事業や町の活性化に、今回主催した団体の中心メンバーがかかわっていると聞いた。人権をテーマにしたフォークバンドを結成し、その演奏活動もやっている。オレより少しだけ年下だが、ほぼ同世代。
 
その彼らが、若い頃は、山田洋次監督を中心に地元の映画館、貞光劇場を会場にして映画祭を毎年開催していた時期があるらしい。西田敏行主演の「虹をつかむ男」では、近在の別の映画館を使ってロケが行われている。
 
三枝監督の映画「オデヲン座からの手紙」もそこでロケをやっている。大林宣彦監督や高畑勲監督も映画祭の作品上映の関係でここを訪ねてきたらしい。光栄なことに、5番目にそこを訪ねた映画監督がオレだったらしいw
 
しかし、映画人がそそられた理由がよくわかる。
 
旧町名貞光町は戦前や昭和初期を思わせる町並みが残っている。うだつがあがる、あがらない…という言葉があるが、そのうだつを保護し、町の観光にもしている。もともと大きな造り酒屋があり、そこがここの土地の大半を所有して、活況を呈していた。
 
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隣接する半田町には製糸工場もあり、藍染も盛んだったらしい。かつ地元の山腹では、タバコの葉を栽培して、専売公社もあったというから、かつては相当の賑わいだったのだろう。
 
とりわけ、吉野川にまだ橋が架かっていない頃は渡し船の発着場があり、徳島市内から生糸やタバコの葉の搬送の船が頻繁に立ち寄る川筋のにぎやかな町だったらしい。吉野川の対岸の高台からそのあたりを見ると、当時の北前船など和船が幾艘も帆をかかげで帆走している姿が目に浮かぶ…

そればかりか、川向こうにある寺町にいくと、どうしてここに?という立派な浄土真宗の寺がいくつもある。そのひとつには能舞台まで! 能好きのオレは、感動と同時に、本当に驚いた。国の文化財になっている寺もある。飛鳥時代から奈良時代にかけて建立された大規模遺構のある寺も… 
 
飛鳥、奈良の昔から相当に仏教が根付き、豪族がいた地域に違いない。古墳跡まである。土地の持つ文化水準の高さがそれだけで読める。
 
 
 
 
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トークショーで語りながら、中高年、高齢者の方々のまとまりのよさに驚いたが、シルバー講座はもう40年も続いているという。高齢者に生き甲斐と希望を与えようとし続ける…その町の人々、地域行政の姿勢も、こうした歴史が生んでいるのかもしれない…。
 
もしかしたら…とオレは思う。こうした地域づくり、まちづくりこそ、これからオレたち日本人が目指すべき方向性ではないのか…