秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

身近にいる俳優には目指してもらいたい

午前中、自転車を走らせ、ブッティストの勉強会に参加。弁護士のKさんも忙しい中参加していた。終了後、帰ろうとすると、赤坂でうなぎと和食の店をやっているYさんから相談事。
 
あれこれ話を聞いているうちに、午後の打ち合わせの時間が迫る。時間がないので、自転車を乃木坂に置いて、電車で移動。結局、ランチを取る間もなく、中野坂上へ。撮影所の仕事が終わった音効のKと打ち合わせ。
 
夏頃は、暇だといっていたが、秋から結構忙しいらしい。30代の頃からの付き合いになるKの師匠Sの方は、今週から公開している『ノルウェイ―の森』、その前の『悪人』『GANTZ』と相変わらず、撮影所通いが続いている。
 
師走とは思えない陽気。ふらりと散歩に新宿まで歩こうかとも思ったが、睡眠不足のからだが重い。とりあえずはと、事務所にもどる。途中、腹が減り、久々近場のなか卵へ。早朝6時に起床し、夕方の4時まで、ほぼ丸一日、固形物を食っていなかった。
 
夕刻、女優修行中の奈穂からメール。この間、事務所の宣材撮影があるからと紹介したイワの店でカットとカラーリング中という。夜はバイトがあるが、その間は時間があるというので、終了後、イワの美容室近くの青山の雑貨店で落ち合う。
 
メシを食ってないに違いないと読んで、カフェを併設している渋谷DEISELへ。奴はバーガーとコーラ。遅い時間にメシをしたオレは、カフェラテ。メンバーは会員カードを提示すると10%オフになる。
 
お茶をし出してすぐから、銀座店から移動になった連中が次々に声をかけてくる。
 
「カントクって、DEISELで有名なんですね。うふっ」
「DEISELで有名なんじゃなくて、銀座店の常連だからさ」
大したことではないのだが、奴の生活からしたら、想像できないことなのだろう。
「そういえば、イワさんのお店のスタッフの方も、この間、お店につれていってもらったときのこと、覚えてくれてました」
「ふーん。すごいじゃん」
「カントクと御一緒だったですよねって…」
「へぇ…。そうなんだ」
「カントクって有名なんですね。うふっ」
「いや、だから、有名なんじゃなくて、イワと親しいからさ。イワがいろいろ気遣ってくれているんだろ」
「料金もカントク価格にしてくれました~」
あらら…と焦ってしまうオレ。イワに気を遣わせてしまったなと申し訳なくなる。
「私、これからイワさんの店に通うことにしたんです。前髪くらいなら、タダで切ってくれるって。うれしいですよね、そういうの。うふっ」
そういえば、この間、悠子も同じことをいっていた。
女は髪型や化粧、ファッションが自分好みかそれ以上でないと、心が落ち着かない。そうしたものが、ちょっと大事にされたり、よく見られたりするだけで気分が変わる生き物。
「ま、いってやってよ。それだけサービスしてくてるんだから」と、まるで、どこかのおねぇちゃんに友人の美容室を紹介しているおっさん気分。
 
女というのは、本当にしたたかだし、たくましい。外見、AKB風、アキバ系風の奴だから、おっさん、兄ちゃんはふとやさしく接してしまうタイプ。コレドのMさんも初めてつれてきたとき、どことなく舞い上がっていた。
 
だが、奴はそれをよく承知している。
 
俳優はよく多重人格でないとやれないという。俳優に限らずだが、人の目に体をさらすことでなにがしか生活の糧を得ようとする人間に、それは必要なことだとオレは思っている。
 
自分が人にどう見られ、思われているかを計算に入れ、そのキャラを表に出しておくことで、無難な線、利点のある線を生きる。だが、心根にはまったく違う自分がいる。
 
まして、若い連中が俳優の仕事を続けていくためには、俳優を続けるためのいろいろな支援や支えが必要なときがある。
 
が、しかし。難しいのは、その塩梅だ。自分のキャラをうまく利用して、支援を得ることに打算が過ぎると、ほぼ間違いなく身を誤る。誤らないまでも、つまらない色恋沙汰に巻き込まれて、無為に時間を過ごしたり、妬みや嫉妬を買うこともなくはないからだ。
 
それで力がありながら、修練、修行を怠り、結局、芝居の世界から消えていった奴をオレは大勢みてきた。
 
愛想笑いも必要だし、ちょっとした色気も必要。ときは打算もいるだろう。だが、心の真に修行者のような気構えがないと、アーティストにはなれないと思う。
 
人格者であるかどうかと、才能のある俳優であるかどうかは、まったく別の次元の話。しかし、やはり、本物を目指すながら、その両方を最後には勝ち取ってもらいたい。
 
ハリウッドの一流俳優を見ていると、あるいはイギリスのトップレベルの舞台俳優を見えていると、いつもそう思う。身近にいる俳優には、そこを目指してもらいたい。
 
海老蔵のようなおバカな俳優がいられる居場所は、そこにはどこにもない。