秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

素直、ストレートに

新神戸から戻り、ぐだくだのシャツを脱ぎ、シャワーを浴びる。
 
昨日の帰りは新幹線の冷房が効かず、じんわり汗ばむほど。それほど、外気の温度が高い。事務所に戻っても、冷房の効いてない、もんわりした暑さに汗がどっと噴出す。
 
メールを確認したり、返信して、部屋も冷え、シャワー効果で汗も引いて、どこかに飲みに行こうかと思っていたら、タイミングよく、バイトが早上がりした悠子が電話をくれた。ちょうどいいからと、ビールを買ってこさせて、冷えた部屋でふたり飲み。
 
悠子が所属するプロダクションといくつかの芸能プロダクションが合同でワークショップをやっているのだが、今週土曜日に臨時講師を頼まれた。普段、そのワークショップには参加していない悠子に連絡して、都合がつくなら受講しろと薦めていたが、すでに聞いて、参加を申し込んでいたらしい。
 
独自にワークショップをやろうといいながら、オレの都合でなかなか日程が組めていない。そろそろ、きちんと形にしなくてはと思う。
 
未明まで、悠子はよくしゃべった。生活を変えてから、明るくなったし、元気になった。もともと、細かいことを気にし、自分を責めるタイプ。不満や愚痴を、まるで、どこかのおばさん風に話す調子はいつものとおり(おふくろのDNA)。だが、前へしっかり顔上げて、歩こうとするようになってから、オーラが出てきた。
 
当然ながら、本人は気づいていない。ただ、これからの時間にいいことがあるような予感に包まれている。その証拠に、以前にもましてよく笑うようになった。
 
自分の話に夢中で、オレの話を聴いていないところは、ハンナのばばあそっくり。こちらにも奴にだから言える話もあるのだが、軽くスルーしやがる。ま、普段、いえない話をできるのが楽しいからそうなるのだが…。まるで親に夢中で話しかける、小さな子どもだ
 
オーディションで採用してから、悠子にこういう芝居をやらせたい。ある思いがすっとある。そのために、俳優修行ばかりでなく、服装や生活のことで、もっと「女」をしろといってきた。基本、それはいまも変らない。もっともっと、女を磨かせたい。できる範囲でいいから。
 
が、昨日、久しぶりに二人切りで話を聞いていて、奴の素の一面も引き出していった方がよいのではないかとふと思った。
 
具体的に何かが浮かんだわけではないが、あいつが、やっとオレの前でぶっちゃけになるようになって、そんなことも考える。
 
よいことなのか、よくないことなのかはわからない。オレは、初対面の人でも、あまり、深く相手のことを考えず、こちらの本音や考え、思いをストレートに投げる。互いの距離を埋めるのに、それが一番いいと思っているからだ。
 
直球を投げられれば、こちらの素がわかるし、それにどう反応するかで、相手の素も見える。
 
化粧で表情をかくし、美しさを装っても、それが互いを深く知る壁になることがある。お行儀よさばかりに心がいっていると、本心を明かす機会を見失う。
 
失礼があることもある。暴言と取られることもあるだろう。年下の男性にはパワハラと受け止められかねない、女性に対してはセクハラと誤解を招くかもしれない。だが、こうしたら、こういったら、どう思われるかわからないと、互いの顔色をうかがい、疑心暗鬼で心の読みあいをしていても、人が人と深く結びつくことはできない。と、オレは思う。
 
コミュニケーションの過ちを怖れるのではなく、コミュニケーションを拓こうと互いの文化をぶつけあう。その先にしか、深い絆と思いは浮かび上がってこないし、伝わらないと思う。
 
その人を思う思い、それが深ければ、過ちが生んだ齟齬をいずれ修正できる。その人を愛する思いが混じりけのないものであれば、行き違いを乗り越えて、肩に力の入らない気の置けない関係を築くこともできる。
 
揺るぎない気持ちで、素直、ストレートに。うざいと思われても、そういう情熱がなければ、閉じた心は拓いていかないような気がしている…。