秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

荷造り作業

新年会がらみですっかりメタボの騎士に戻った身体を糾すべく、ウォーキング。

国立競技場では、大学選手権決勝のラグビーが開催される日だが、やはり、周辺の人通りは例年ほどではない。

二年連続決勝へ出場した帝京大と初登場の東海大学戦。新しいうねりが大学ラグビーにもきているのだが、おそらく、まだ、それぞれの大学のメインスポーツとしては定着していないのだろう。

早稲田、慶應、明治、法政などといった伝統校は、大学の看板スポーツとしてラグビーが定着しているから、決勝となれば、多くの学生が行列をつくって観戦にくるし、歴史も古いから卒業生など、OB連中も応援にくる。それが新興大学では、まだ伝統がないゆえに、集まらない。

例年、早稲田が決勝に進んだ時は、寒空の下、国立まで応援に行くオレも、今年は、テレビ観戦を決め込む。軽く汗をながして事務所に戻ったあと、引越しのための片付けをしながら観た試合だったが、実に、見ごたえある、レベルの高い、いい試合だった。

フォワード力とディフェンス力の帝京と見事なパスワークの東海との試合は、きっと、大学ラグビーの歴史を変えた。試合を見ながら、早稲田と慶應がなぜ敗退したのかが、歴然とわかる。力の差は明白だ。

社会人ラグビーに匹敵するスピードと確かなパスワーク。ミスがほとんどない。それにフィジカルが強い。精神力だけでなく、両チームの監督が、高い目標を持って、選手たちを指導し、スキルにこだわっている姿勢が試合の端々で読めた。

日体大の先輩後輩の監督で、現役時代は、早稲田、明治、慶應などの伝統校に辛酸を嘗めてきた選手だっただけに、伝統校の壁を越えるために、自分たちになにが必要かを必死に模索してきた勝利だ。見事。

競技場に来た学生は少なかったが、ラグビーファンの多くが、絶賛した試合だったと思う。

大学ラグビーがおもしろいのは、一年でチームをつくりあげなくてはいけないから。新入生が入り、4年生が卒業する。選手が入れ替わらざるえない中で、監督やスタッフが一年をかけて、チームをつくる。毎年毎年、選手の能力や性格、チーム状況を読みながら、強いチームをつくっていく。

それは、まさに人を育て、人に育てられる時間だ。対抗戦やリーグ戦を経て、大学選手権決勝までコマを進めるのには、確かな研鑽と努力がいる。また、大舞台で勝負できる精神力もいる。帝京にしても、東海にしても、その歳月は長く、かつ、大変な努力をしたのだと思う。

名門校や伝統校には、確かに歴史という大きな財産がある。しかし、いまのからの時代、そうした歴史と権威がなかければ、新しい風を呼び起こせないということはない。

それは、スポーツの世界ばかりでなく、政治においても、経済においても、文化においてもそうだと思う。バッグボーンや過去の伝統は、ある意味、確かな経験によってつくらたものだ。いわば、経験主義が名門、伝統校の価値をゆるぎないものにしている。

だが、その経験主義が、いまの時代の閉塞感や先の不透明を生んでいる。

志を高くもち、そうした権威に頼ることなく、学習をつんで、自らの理想とする目標へ努力する。そこにしか、本当は、新しい時代を切り拓く力は生まれない。

戦後65年といういま、そうした過去からの清算と脱却を必要とする時代に、オレたちは生きている。

昨日の試合は、それを痛感させ、かつ、そこに未来があることを予感させてくれる、示唆的なスポーツドラマだった。きっと、時代は変る。なぜか、強くそう感じた。

気がつけば、オレは、朝3時まで、引越し準備を続けていた。新しい未来へ、気持ちを変えるための、荷造り作業。