秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

早稲田の敗北

午前中、港区芝に出向き、ブッティストの集まりに参加。終了後、急いで自転車を走らせる。
 
朝から何も食べず、腹が減っていたが、時間がない。六本木の吉野家で持ち帰りのすき丼を買う。あわてていたのは、大学選手権ラグビーの決勝戦が始まる時間が近づいていたから。
 
早稲田は、もう2年優勝を逃している。早稲田ばかりではない、明治、慶応といった伝統校の優勝を阻んでいるのは、新興の大学。とりわけ、関東学院、東海、帝京。
 
いずれの大学も、監督が日本体育大学出身。長く、関東対抗戦ラグビーで、早稲田、明治、慶応の伝統校に歯が立たず、大学選手権にも出場できずに悔しい思いを現役時代に体験してきた監督たちだ。
 
昨年の決勝は、東海、帝京。長いラグビーの歴史で、伝統校がからまなかった初の決勝戦になった。しかし、徹底したFWのフィジカル強化、ブレークダウンからのボールの支配、ラインアウトのボール獲得、それらFWの圧力をすばやいBKの縦攻撃につなける。これまで大学ラグビーレベルでは、習得できていなかった、攻撃的FW戦のテクニックを身につけている。
 
歴史的に展開ラグビーこそラグビースタイルとしてきた、早稲田は、そこにやられてきた。明大が強かったときもFWの突進力があったからだ。
 
いまサントリーの監督になっている本宮は、その早稲田のスタイルを守りながら、FWの強化に努めた。それが大学選手権の連覇にもつながった。
 
しかし、この2年、東海や帝京のFWの強化は、これまでの大学ラグビーを越えている。帝京は、ニュージーランドで将来トップ選手になる留学生二人を入れ、不足しているFW力、BK力の要とした。
 
昨年、関東対抗戦では、この二人の力をうまく生かせなかった。それは、徹底して、早稲田がFW戦、とりわけモールに持ち込もうとする帝京の作戦をつぶしたからだ。
 
だが、昨日の試合は違っていた。対抗戦4位という、かつての成績に落ちた帝京は、わずかの間にチームを修正し、スクラムからモールへの展開を徹底して組みなおしていた。セービングしてからのFWの参集も早稲田より早かった。もともとFWの圧力はある。結果、試合は点差以上に帝京が支配した。
 
ワントライ差まで詰め寄ったが、前半折り返しの時点で勝敗はほぼ見えていたと思う。
 
早稲田は2トライ、帝京は前半の1トライのみ。それでも負けたのは、帝京の徹底したFW攻撃で守勢に回り、時間をつかわされたからだ。体力を消耗し、こらえきれずにペナルティを犯した。それがいくつものペナルティキックを決められる結果になった。
 
おそらく、展開されたら、対抗戦同様、負けると帝京はわかっていた。ボールだしにも時間をかけ、早稲田のフィフティーンを帝京のFWの前に集めて、展開ラグビーをさせなかった。
 
ラグビーは密集が大事だと、この間、紹介した。密集戦で劣性に立つと、ほぼ試合には勝てない。ある意味、密集で、いやらしく、こざかしいことをやらないといけないスポーツでもあるのだ。早稲田のラグビーが人気があるのは、FW戦のそうした密集に頼らず、スピードのある展開で傍目、きれいにトライを決めるから。
 
だが、その分、あこぎさに劣る。
 
昨年の東海、帝京のラグビーを見て、大学ラグビーにも新しい時代が来たとこのブログで紹介した。早稲田がこの新しい時代に優勝し、かつ連覇をするためには、展開ラグビーを守りながら、より高い、フィジカル強化とFW戦のテクニックを身につけていくしか道はない。
 
体力や重さに負けても、高い技術でそれを突破する。それができてこそ、大西監督が築いた美しい展開ラグビーができる。
 
伝統を守るということは、伝統にしがみつくことではない。伝統の系譜の中で、いまを生きる人間が、そのときできる新しい取り組みをする。その積み重ねが伝統になるのだ。