秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

負けは人生の大切な教師

箱根駅伝の復路。久々駅伝で泣かされた。
 
18年ぶりの総合優勝。しかも、出雲・全日本・箱根と3冠達成!
 
泣かされたのは、長く早稲田の駅伝が低迷にあったからだ。18年前、早稲田が優勝したのは、現監督の渡辺が早大1年の頃。以来、不振が続いた。その間、悔しさにまみれ、忸怩たる思いで卒業していった駅伝の選手は数え切れない。
 
もともと駅伝など、スポーツに力を入れていない、あるいは、もともと弱小で、たいした成績が残せていないという学校なら、予選会で出場権を獲得する、シード校入りする、くらいで十分満足できる。
 
だが、早稲田は大正時代に箱根駅伝が始まって、常にトップ集団にいる学校で、優勝も多い。いわゆる伝統校、名門という冠がついている。それだけに、低迷と不振の重さが重い。
 
歴代のOB、卒業生、指導者たちが築いた歴史と伝統を守らなくてはという思いと責任。その中で、勝てない、出場できないという辛酸は、現役選手たちにとって、どれほどつらいか。
 
まして、競技スポーツは、レギュラーになりたくても、なれない選手もいる。名門、伝統校といわれる学校には選手も集まる。その中で、出場の機会がえられず、4年間を終わる学生も少なくないのだ。
 
そうした、多くの思いを肩や背中に背負って、選手はコースやグランド、コートの上に立っている。声援してくれている自分の地元の高校や仲間、親、ふるさとの思いもある。
 
最終ランナーでキャプテンの中島賢士は、母子家庭。苦労して大学まで行かせてくれた母への感謝と恩返しの思いで走りぬき、追撃する東洋大に20秒の差を縮めさせなかった。
 
昨年は、同じ東洋大に10区で抜かれ、優勝を逃している。その悔しさもあっただろう。
 
人は、負ける。人生には、たくさんの負けがある。負けることは悔しい。だが、そこから学ぶことは勝つことより、はるかに大きい。負けてみて、初めてわかる、つらさもあれば、それを支えてくれる温かさ、願いに出会うこともある。
 
それへの感謝があれば、決して人は負けても、負けを無駄にしない。負けを人生の糧として、いつか、なにかの形で勝ちにつなげられる。
 
いまの時代、負けること、失敗することを避けようとする。避けようとするから、あえて冒険をしない、挑戦しない、取り組もうとしないということが生まれる。
 
かったるい、面倒くさい、つかれる…。闘うことが、立ち向かうことが、みっともないことのようにいわれ、無難に、調子よく、周囲に合わせていれば、波風が立たないと、仮面をかぶる。
 
どんなに世界が暗く、まだ夜明けが見えないときでも、自分の暮らしがつらく、さびしいときでも、そして、自分の思いが届かないときでも、負けを無駄にしないという強い思いがあれば、世界は変えられる。
 
それをだれかに期待するのではなく、自分の小さな世界から、まず始めなければ、いつまでも、自分自身が変われない。
 
負けは、自分をどう変えるかへ導いてくれる、大切な教師なのだ。