秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

人は人に育てられる

雨の中、カッパを羽織って、河田町にある編集スタジオへ。長い付き合いのオペレーターのIに作業を依頼し、再び雨の中を事務所へ戻る。

最近は実に便利になって、映像データもメールで送ることができる。以前のように、編集スタジオのチェアーに座り、作業が終わるまで見届けるということをしなくてもすむ。

一時、別のスタジオを使っていたときもあるが、オレが自分で編集までやるようになってからは、うちの編集機ではできない作業は、Iのスタジオに頼むようにしている。ちょうど、秀嶋組の音効をやっているKのスタジオが中野坂上にあり、自転車移動のオレは、河田町⇔中野坂上のラインは動き易いこともあって、いまでは、このラインがオレの制作ラインになっている。

Iはフリップや簡単なCG制作までこなすから、デジタル機器やその活用にはひいでていて、オレのようにあれこれ忙しい人間には大助かりだ。で、事務所に戻り、酒豪編集者Rに残りの原稿を書き上げると約束していたので、一日、原稿書き。打ち合わせに来るRを待つ間に、Iからメールで送られてきた映像を確認し、OKを出す。同時に二つの仕事ができてしまった。いやあ、ほんとに便利。

そのうち、オレたちの仕事も、撮影以外のまとめの作業がすべてネット上でできてしまう時代が来ると思う。それは、もうそう遠くないかもしれない。それがいいことなのかどうかはわからないが、遠隔地にいても、人と合わなくても仕事ができてしまう環境が、ITの進展とともに、どんどん現実になっている。

全部ではないが、Rが来るまでに終わらせようと思っていた箇所まで終わらせると、いいタイミングで、いつものようにやや疲れ気味に登場した、R。ほぼ原稿書きに近い力の入れ方で、原案作成に入ってしまったオレの状態がわかっていて、提出する企画書は自分が書くと資料を用意している。実は、オレも企画書はRに押し付けようと決めていた。

メールで済ませられることもあるが、しかし、こうして、顔を合わせて、互いが先読みしていたことを共有するのは、やはり、大事だと、Rの手回しのよさに思う。何かを共につくり上げていく上で、人と人が顔を合わせ、わかっていることでも、あえて互いの顔を見て確認するというのは大事なことなのだ。

途中、自分の原稿の直しで連絡が入ったというRは、せっかくビールのつまみになるみあげを持ってきていたのだが、それに口をつけることもなく、そそくさと、打ち合わせに向かった。後でREDで合流しようということにはなったが、奴のことだ、また、その行った先で、手を抜くことなく打ち合わせをし、きっと遅い時間にならないと登場できないだろう。

仕事に手を抜かず、やるといったら必ずやるという奴の精神性は、たぶん、W大のバスケットで培われたものなのだろうが、それだけではない。その精神性をつくった家庭の環境や親子関係、友人関係とった、いろいろな出会いの中でつくらているのだ。

人は人に育てられる。何かのCMにそんなコピーがあった。

当たり前のようなことだけれど、人は人で出会わなければ、感じさせられない何かがある。それがなくなってしまったら、たとえネット上で、どのように便利なことができるようになったとしても、その作品や創作物は、いいものにはならない。

だから、人は人と会う労力を惜しんではならない。