秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

一日のテーマ

朝から夕方近くまで、中野坂上のDスタジオで音付の処理。
 
音効担当のKとプロデューサーのCさん、オレとの3人作業。今回の作品は、Cさんカラーがよく出ていると、音付しながら思う。
 
作品のカラーを決めていくのは、本来、プロデューサー。だが、監督・脚本家とプロデューサーとの信頼関係が根底になくては、それはできない。久々、東映自主作品に関わったCさんとオレが、互いの意見はいい合いながら、同時に互いの個性を生かそうした。それが作品に出ている。
 
いろいろ意見はあるが、いい作品だと思う。
 
音の確認と整理ができ、ランチを終え、ミックスダウンの作業に入る頃、Kの師匠で、オレとはもう25年の付き合いになる、Sがめずらしくスタジオにいる。Sもオレが来ていると聞いて、顔を出してくれた。
 
Sは、東映の「鳥刺し…」に始まり、「十三人の刺客」、大ヒットしている森田監督の「武士の家計簿」、いま公開中の「ノルウェイの森」。来年早々から、同じ森田監督の「A列車でいこう」。おそらく日本で一番忙しい音楽・効果コーディネーター。
 
Kは、日本アカデミー賞のすべてにノミネートされている「悪人」、来年一月公開の「GANTZ」前・後編と、年3本の映画と2時間ドラマなどもこなしている。
 
SとSの最近の仕事のこと、オレの映画の企画のことなどあれこれ話す。「なんか、こじんまりとした、いい作品をやりたいですよねぇ…」。思いは同じだ。それは、弟子のKも同じ。
 
俳優の名前や大仰に予算をかけた作品ではなく、きっちりした脚本をきっちりと芝居のできる役者と一緒に映像化し、その作品にふさわしい映像テクニックや編集、そして、音楽がある。そうした作品をつくりたい。オレたち秀嶋組のみんなが思っている。
 
映画や芝居は音楽なのだ。というオレの持論があるが、Sと初めて出会い、最初の仕事をしたとき、演出や台本、編集に込めたオレの譜面を見事に読み切って音付をするSの音楽性の高さに感動した。
 
その頃は互いにいまほどのキャリアはなく、作品も、ある大手飲食会社の国内外向けの企業CIだった。そのナレーターは、久米宏ニュースステーションの報道ナレで注目を集め、NHKでほぼレギュラーになている。
 
これも、やはり文字を言葉という音にするという音楽性が大事な仕事。
 
人見知りで、無口なKが、Sの代役をするようになって、すぐに打ち解けたのも、オレたちの物づくりには音楽が重要なのだということを互いが知っていたらかだと思う。
 
夕刻、事務所にもどり、ユーストリームの動画配信の技術について、OA担当に連絡をし、あれこれ雑務を片付けていると、この間、コレドのMさんに紹介してもらった、有名女優のTさんから、先日のお礼の電話をもらう。
 
その件を伝え方々とコレドに顔を出す。久々マエストロのSさん、M劇団のKさんらがいる。来年からひと月違いで入院するのんべのおやじたちをいじっていると海坊主。
 
潮が引くように人がいなくなり、Mさんが俳優養成のことであれこれ聞いてくる。そのうち、こちらも熱が入り、マジ語る。従業員で俳優を目指すOちゃんのために、Mさんが客も少なかったので、話をふったのだ。
 
そこでも音楽の話、リズム、テンポをつくる所作の話…。一日には、その一日のテーマがあるものだなと、ふと思う。