秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

団塊世代のロマンポルノ

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写真は 何度かここで紹介している乃木坂のシアター&バー コレドhttp://www.tc-coredo.join-us.jp/

一押しのメニュー「すきやき」

ちょうと一人分の鍋に 必要な具材がきっちり入っていて お好みでライスもつく

「鍋の中に すきやきの宇宙すべてが閉じ込めてある」とはぼくの喩え

ま、ぼくの大好きな「花伝書」流にいえば、すきやきの宇宙を切り取り、余剰をはぶき、小さな一人用鍋

の世界に凝縮することで、かえって雄弁にすきやきそのものの本質を語っている ということになる

さすが舞台もやっているオーナーのMさん ここにも演劇の本質が込められているのですね(爆)


RedのオーナーのYが常連のイガとベティとコンサートに行くので、その帰りに呑みましょうよと誘われ

ならば、いつも話しをしているコレドに行こうよと 彼らを誘い 一足先に飲んでいました

コレドは来月 恵比寿から乃木坂に移転し 5周年

「祝い花でも贈ろうか」という話から 「死んだときにどれくらい弔い花が届くか気になるよね」と話題

は広がる 果ては「新聞の死亡欄に載るか載らないかはどこで線引きするのだ?」という話題になり

某有名女優を妹に持つMさんが 「オレが死ぬ時には○○の兄って書かれちゃうんだろうな…」となった

最近 DVDになって再販された映画作品のパッケージの裏に 「○○の兄 Mが脚本を担当!」なんて宣伝

文句を書かれてしまったらしい

そこで その再販されたDVDの話になったのたのだが DVD発売記念などと銘打って内々の試写会をやった

のだが これが爆笑に次ぐ爆笑だったらしい

Mさんはかってバリバリ一線のシナリオライターで いろいろな映画・テレビ台本を書いていた人なのだ

が 昔 やっつけ仕事でやった日活ロマンポルノの作品がDVDになり それでは試写会でもということに

なったのだ しかし これが 「犯しの竜」とかなんとかいう高校の転校生が次々に同級生の女子をレ

イプしまくり、最後に憧れのマドンナを落とすまでを描いた それだけでも笑えちゃう作品なのだ

Mさんにしてみれば やっつけでやった仕事だし 気合も思い入れもなく その本を書いたことすら忘れ

ているような作品なのに 試写会はやたら受けまくりで ロマンポルノの販売ランキングでもまぁまぁだ

ったらしい

その訳はなに? と話しているうちに Mさんの若い奥さんに「コメディギャグとして観てたんじゃない

の?」と投げかけると大きく頷く

やっぱりな

なんせ ぼくの回りもそうなのだが 団塊世代というのは実に奥手な思春期を過ごしていて

初体験が20歳過ぎというのはゴロゴロ

なぜか性道徳に従順で 思春期には手をつなぐだけで ほぼセックスしたのに等しいくらいの衝撃を受け

ていた連中なのだ

日活ロマンポルノはそんな思春期を生きた連中が 憧れと妄想を含めつくっていたわけで

そりゃ いま観れば 古色蒼然 「そんなのありえねぇ」という性描写にあふれている

なんせ 体験が希薄なのだから リアリティがあるわけがなく それをいまの若い連中が観たら

きっと爆笑物だ

まして 単刀直入にセックスを語ることにてらいもあり やたら そこに行くまでの経緯が説明的で

まどろっこしいくらいに描かれていて 若い頃 友人に連れられていった日活の劇場で 「能書きや言い

訳はいいから 早くやれよ」と心の中で叫んだものだ

つまり 団塊世代が中心になって 一世を風靡した日活ロマンポルノは文芸作品の中のエロをきちんと

描くという触れ込みだったけれど 実は おじさんたちの叶わなかった思春期、青年期の夢を映像化し

たもので、まさに団塊世代のロマンでつくられているから ロマンポルノなのだ

もちろん すばらしい作品もあったから キネマ旬報などでも当時大きく取り上げたし 武田泰淳夫妻

のようにそれを観るのを楽しみしていた知識人も少なくなかった

Mさんもそうした気合を入れた作品も書いているらしいのだが そっちの方はトンと受けず

ある意味 さらさらと妄想だけで書いた作品の方がコミックやギャグのように受けたのだ

たぶん 妄想だけでなんとなく書いた本には Mさんらしさがどこかに出ていたのではないだろうか

Mさんと話していつも思うは つくづく正直な人だなぁという思い

妹とは比べようもなく 底抜けによき人なのだ

確かに 死ぬときに○○の兄とキャプションされるのは 気の毒な気がする

それがわかる 奥さんと付き合うようになったときの話もそのときしたのだが 

それはまたの機会に