秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

きみちゃん

久しぶりに、午後の麻布十番をぶらぶらした。自転車移動のよさは、時間が許せば、思いつきで、ふらりとどこかに立ち寄れるところだ。

十番はその名のとおり、碁盤の目のように道路区画されている。その商店街の中心の目印のように、十番2丁目の十字路に小さな公共スペースがある。
 
地元では、「きみちゃん像」のあるところといえば、すぐにわかる。あの有名な野口雨情の童謡「赤い靴」の女の子だ。

知らない人もいるので、付け加えておくが、赤い靴の女の子は、異人さんに連れられて船には乗っていない。
 
結核を患い、渡航困難で、養女にした宣教師夫妻はやむなく教会にきみちゃんを託し、麻布にある東洋英和女学校が寄付を募って開設した孤児院に引き取られている。そこで9歳で亡くなった。
 
それを憐れんでつくられたのが、きみちゃん像。養女に出した夫妻も、雨情もきみちゃんの9歳の生涯を知らないまま他界している。像がつくられたのは平成元年。
以来、きみちゃん像は麻布十番の街の変化を見つめ続けている…
 
そのきみちゃん像の当りをぶらぶらしていて、おやと思う店をみつけた。IVYテイストを感じさせながら、イタリアファッションのにおいのするメンズファッションのセレクトショップ
 
店先の小さなショーウインドウに飾ってあった、オシャレな革ジャンと店入口にあるパーカーに目が止まった。
 
店内に入ると、オシャレな年配のオーナーさんが、私の来ていた北欧テイストのあるフードのついた薄手のダウンをみて、いいの着てますね…と声をかけてくれた。

ただ者ではいな…と思って、いろいろ話をすると、なんと、IVYの父、石津謙介氏と縁があり、IVYショップもやっていたという。なるほど、イタリア風ながら、どこかIVYだなと感じたのはそのせいだ。

つい4月からMDをいまのテイストに変えたというから、こんな私好みの店があると気づかないはずだ。例によって、衝動買いに襲われそうだったが、あまりに好みの服や靴が多過ぎたのがよかった。もっとゆっくり、じっくり来たいと思ったからだ。
 
それに、きみちゃんが見ていた…w 
 
北海道開拓に出た夫妻が苦難の生活の中で、やむなく娘を異人の宣教師に託した。子どもを生かすための選択だったが、すでに病魔が忍びよっていたのだろう。
 
親にも知られず、東洋英和の生徒たちや教会の人々に見守られていたとはいえ、その死も知られず、世を去る不安は深ったと思う。

街の変化、そこには人々の変化がある。政治や行政、教育や経済、生活の変化がある。人が人にやさしくあろうとする思いはあったとしても、地位や暮らしの安泰や束の間の遊興や贅沢に罪を感じない世の中…。
 
人の気持より、人の思いより、自分の気持ち、自分の思い、自分の都合ばかりで頭がいっぱいになり、それが人を振り回し、人を傷つけていることに気づけない世の中…
 
貧しい時代に生きた、きみちゃんはどう見ているだろう。

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