秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

いま、どうしているのだろう?

日本の借金をゼロにしてもらわなくては困る…と考えている人たちがいる。いや、正確には、人たちではなく、国がある。
 
その国は、小泉政権下で金融の自由化を推し進め、日本のファイナンシャル事業に多額の投資をした。その資金は、銀行・証券・保険といった、金融業界だけでなく、金融資本に頼る大規模開発の不動産、建設、医療、エンターテイメントといった投資や開発費のかかる業種をも巻き込んだ。
 
その国の意志ではないという形を装うために、取り組みはグローバリズムと世界言語のようにネーミングされ、それはいまも続いている。

投資の担保にされたのは、郵政。とりわけ、郵貯だ。郵政民営化の裏には、その構図があり、日本の金融を根こそぎ、その国の傘下に吸収するために、巧妙に郵政民営化は進められた。国営であるかぎり、郵貯は担保にはできないからだ。
 
結果、その国の国益のために、大規模投資が生み出す利益や権益をえるために、都市一極集中型が驚異的なスピードで実現したし、それにより、地域間格差、それに伴う収入格差が増大した。同時に、郵便局を軸とした地域共同体の柱も失われた。
 
歴史的にみても、こうした競争原理と地域社会を骨抜きにする考えは、日本人の発想からは生まれにくいし、現実に、格差を前提とした競争原理をうまくすり抜ける中で、日本は高度成長を達成している。
 
つまり、日本人にとって一番なじみにくい、自由競争原理、市場主義を強引に持ち込むことで、その国は、投資に見合う利益をえたいと考えてたのだ。

それが、自分たちの思惑通りにはいかなかった。そればかりか、石油・軍事資本という、その国を支える経済資本を回復するために、いわれなき戦争を中東で起こす。それはデリバティブという数字のマジックでバブルをつくったツケが返ってきたときに起きている。
 
しかし、戦争が景気を圧迫すると、次に、サプライムローンという、これも数字のマジックで、虚構の好景気を生み出し、経済回復を装った。しかし、これも、リーマンショックや大手自動車メーカーへの公的資金の注入という破たんを招いた。
 
日本への投資は、自国で成功した自由競争原理の導入のように、うまくいかず、投資への見返りが思うように期待できない…ということも明らかになってきた。まして、震災が襲った。このままでは、自国の資金がもっとやばくなる。
 
ならば、この際、日本に借金をゼロにしてもらおう。とりあえず、世界金融における信頼だけは回復してもらわなくては、オレたちの利益がえられない。
 
「おい。総理。わかっているよな。消費税論議だけでだめだぞ。早いとこ、増税の線引きを示して、国民に納得させろよな。いまなら、震災で金がいると国民は思っているし、それなら仕方がないと矛を収める。ここが千載一遇のチャンスなのだ…」
 
といったかどうかはわからないが、年末のこの時期に政府は慌ただしく消費税増税のアウトラインを示した。

小泉改革後、日本の経済構造に大きな歪が生まれ、自由競争と格差の導入によって、ガタガタになっている現状やその回復には、民間だけでなく国政、地域行政の大きな改革なくして、回復などできない…という日本の内情は関係ない。
 
とれるところでとる。とれるうちにとる。それだけしか、その国の考え方、生き方の基本にはない。デフレの中で消費税を増税すれば何が起きるか…などということもわかっているが、斟酌していはいない。

マイケル・サンデルの書籍がベストセラーになった、あの国で、そして、この国で、そこにつづられた社会改革の必要性をわかっている人たちは、いま、どうしているのだろう。
 
円高を利用して海外? 非正規雇用労働者やリストラしたサラリーマン家庭の生活を犠牲にして、優雅にホテルで新年? 気の毒にと被災地に義援金を寄附しただけけで、高層ビルのマンションで、夜景をみつめがながら、新年のシャンパンだろうか?