秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

3つの生き方

世を生きる処し方として、いくつかの生き方がある。
 
だが、それはおおむね、3つ。一つは、風の向く方向に鼻先を合わせ、いわゆる風見鶏と主体性のなさを批判されようと、時流を読み、時流に合わせて身を処していくという生き方。
 
これには、発想の柔軟性、機を読む機敏さ、物事に執着しない自由さが求められる。実利をえることを重視するなら、これもひとつの生き方だし、企業の経営者や時流を読むことを生業とする仕事にあるもの、評論家やマーケッター、ジャーナリスト、表現者にも、こうした資質は求められる。
 
それと対局にあるのが、風に逆らいながら、向かい風の中を果敢に進む生き方。そこには、自分の信念や確信を厳しい向かい風の中で鍛え上げながら、まさに、「敵は幾千ありとても、我ひとりとて、いざゆかん」精神が必要。職人や表現者に求められる資質だが、ときには、前述した人々にも求められる資質でもある。
 
最後のひとつは、時流を読みながら、ときに風見鶏になり、また、ときには、己のこだわりを貫徹するために、あえて孤独にも耐えるという生き方。
 
3つ目の生き方が実は、一番難しいし、現実と理想の双方を見極める胆力と時に合わせながら、己を失わない気骨がいる。おそらく、一番、その人間の心のうちが読み取れないのは、この3つ目の生き方をしている人間だろう。
 
直情的な人間には、とても3つ目の生き方はできないし、すべてを風の流れに合わせる人間には、これもまた、難しい。
 
いまの菅政権。問題なのは、この3つのどれでもないことだ。経済戦略においても、外交戦略においても、明確な方針と指針が見えてこない。野党、そして、鳩山、小沢時代のこだわりは、とうにかなぐり捨てている。今般の国連での演説や会議でも、途上国が喜ぶ支援を提言し、アメリカには自民党時代以上の親密な関係を築こうとしている。
 
PKO活動にあれほど、ブレーキをかけていた政治家が、自衛隊PKO活動にもっと力を注ぐと宣言する。
 
代表選のせいで、円高においても、まったくといいほど、有効な手立ても打てず、内政、外交すべてが停滞している。
 
中国が尖閣諸島の領海侵犯問題で攻勢に出ているが、これにも、的確な対応ができていない。
 
こだわりもなく、方針がみえない。そこに、中国はもとより、アメリカもその真意を知りたいという計算が生まれる。もし、こだわりも、方針もないとわかれば、アジアの覇権をえるために、中国政府はより攻勢に出てくる。
 
外交、経済で切り札を持たない日本。その底の浅さが世界に読まれたとき、破たんへの道を進む危険が、いまの菅政権にはある。