犬も歩けば、棒に当る
台本が進んでいない。そんなときは、いっそのこと、別のことをやるに限る。
犬も歩けば、棒に当る。一昨日は、遅い時間にハンナのばばあの顔をのぞきにいき、閉店時間近く、偶然、店の前を通りかかったという、ネーリストに遭う。
なんでもOちゃんがビルボードのチケットをとっていて、薦められていったらしい。Oちゃんと二人だけかと一瞬思い、それはまずいだろうというと、レッドのコア常連など数人も一緒だったらしい。
いまどき、オレは古いのかもしれないが、交際相手や恋人のいる男女が、別の男女と二人きりで映画やコンサート、その後の飲食を共にするのは、人の道理に反すると思う人間だ。
あれこれ理由や口実は聞くこともあるが、大方、交際や異性関係のあり方への不満や寂しさからそうしたことをやる場合が多い。要は、だれか、別の異性の温もりを求めているだけ。
男と女はどこで、どんなまちがいやなりゆきになるかわからない。セックスへの敷居が低いからというだけでなく、敷居が高いからこそ、本人も気づかない間に内側にたまった異性を求める欲求が急激に肉体的な欲求に変ることもある。
人間は、自分の脳で考えるほど、立派にも、清楚にもできていないのだ。ひとつけじめをつけて、次にいくという道理は、いまや通用しない、チャライ時代。
昨夜は、一ヶ月ぶりくらいに、これも遅い時間にコレドに顔を出す。久々に会う、テレビドラマの演出家のSさんが、高田馬場の旅館のおかみさんを同伴している。
Sさん、次々におやじギャク、駄洒落を飛ばし、めずらしく全開。オレの大学の先輩ということもあるが、初めて会ったとき、団塊世代のSさんを無礼を顧みず、いじりまくった。
なのに、いつも顔を合わせると「お前は、手前勝手に全開じゃないと、お前じゃないんだよ」と、オレの無礼さの向こうにあるものを見抜いてくれている。
店には、これまで働いていたバーテンダーのYくんに代わり、客としてもきていた、京女のSさんが助っ人で入っている。オレのブログをよく読んでいる人に誤解のないように注釈しておくが、京女優のKさんではない。
実は、いかがなものか…と、疑心暗鬼だった。ところが、これが、うまい。演出家のSさんが薦めるわけだ。
Mさんにカウンターに座ってもらい、芝居のこと、映画のこと、監督業のこと、役者のことと、とりとめもなく語る。
指示型人間と指示待ち人間の違いで、いささか盛り上がる。仕事以外のおもしろい話が久々できた。
やはり、犬も歩けば、棒に当る。