秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

感謝

東映のプロデューサーCさんと打ち合わせをする。

預かっていた宿題は、福岡に帰省する前にメールで送っておいた。オレの思いの深さや作家としての頑なさをよく知っているCさんは、すぐに電話をくれ、「これでいいのではないか」と一言くれていた。

早々に映画の企画が通る時代ではない。その至難も承知の上で、「秀嶋さんの作家性を生かしましょう」といってもらえたのは、ありがたい。いつもわがままな奴ですみません。

旧態然とした映画づくりの世界で、あたらな作品をつくり上げるという思いや行動が必要なのは、Cさんもわかっている。規定の価値を突破するには、その熱い願いしかないからだ。東映の映画制作という規定の枠組みで受け入れられなければ、自分たちのネットワークをつかって、実現のために汗を流すという道もある。

物事を実現するのに、大きな力は必要だが、信念を投げ打ってまで一つの力に頼る必要はない。オレは、そう思っている。苦労しても自分の信念や願いを実現したいから、いまの生活を選んだ。それを捨てては、これまでの時間が無駄になる。いままでオレを支えてきてくれている人にも報えない。

名を得ることが目的でもなく、豊饒な生活を送ることが夢でもない。人や社会の評価は大事だが、信念を貫いて、あの作品に出会えてよかったと思ってくれる人や評価が重要なのだ。それができる表現者、作家でありたいし、それに近づくために、いまを生きている。

昔、東宝の演劇企画室で渡辺先生に、帝劇の舞台台本の執筆を依頼されたとき、自分の能力を評価していただいて、飛び上がるほどうれしかったが、その話に乗れなかったのも、自分のやりたい舞台とは思えなかったからだ。

若造が生意気なことをしたと、いまは思うが、やはり、そのときの決断は間違っていなかったと思う。

そのせいで、オレの家族や周囲の人間には、苦労をさせているし、迷惑もかけている。そのことは、申し訳ないと思っているが、オレが心を売って、仕事をしたところで、奴らが心底喜んでくれるとは思えない。オレの夢に付き合って苦労してくれている連中には、オレの夢で恩返しをしたい。

そんなわがままな奴でも、オレは、まだ、表現という場にいさせてもらえている。作品がつくれない連中がいる中、コツコツ、作品がつくれるという機会を与えてもらっている。それは、この上なく幸せなことだ。東映の方々には、本当に心から感謝している。

今日は、久しぶりに、以前、仕事でお世話になった薬剤師のS先生に会いに、亀戸神社近くまでいく。これも東映が受けた、東京都のコンペ作品の取材のため。高齢者向けの社会貢献の高い作品だ。

ひとつひとつの作品が、自分の親のこと、家族のこと、子どものこと、そして、自分自身のあり方、自分が日々出会う人々のことを振りかえらせてくれる。そして、この国のあり方、社会や地域の姿、世界のいまを考えさせてくれる。

試練は多いが、オレは本当に幸せなのだと思う。

明日は、おふくろ亡くなった日。改めて、生んで、育ててくれたおふくろにも感謝しよう。