秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

心の構え

元気になったベティと青山一丁目の246で、ほぼ夕食近い、遅いランチをする。

初の泥酔体験で、胃液を吐き出した奴は、喉のひりひりと、まだ抜けきれていないアルコールで、脳に霞が出ている。そうはいっていないが、ひと目でそれとわかる。意識はあっても、脳も体も思うように動かないのだ。

これほどの二日酔いも初めてのことだったのだろう。とにかく、大量に水を飲ませ、内臓を動かすために、薄味のチャイニーズスープをつくり飲ませる。だが、さすがに、まだ若い。断片的ながら、かなり昨夜のことを覚えている。ゆえに、恐縮しきり。

酒豪編集者Rに電話し、無事を伝える。Ryokoにも連絡したが、すぐに返事がない。奴も体調はよくなかったのに、快方に最後まで付き合った。朝まで付き合い、体調が悪くなっているのではないかと心配したが、ベティと別れた後で電話が入る。さすがに、いま目覚めました。苦労人のRyokoは、ベティが傷ついて、店に来つらくなっていたのではないかと心配する。

ベティは、こてこて女の子だし、まだ幼いところもあるが、長女ということもあって、芯はしっかりしている。意外と、見かけよりは打たれ強い。心配をかけた、トモ、ヒロ、You、そして、最後まで面倒をみたRやRyokoへのお詫びと申し訳なさの気持ちはあるが、これでヘコタレルようなことはない。きっと、一人になれば、あれこれ考えてしまうだろうが、見守ってくれていたみんなのやさしい気持ちは伝わっているから、また元気に顔を出せる。

昨夜は、さすがにオレも無事、ベティを帰し、どっと疲れが出た。秀嶋組のHの結婚祝いも朝までで、次の日はソファ寝だったから、疲れが溜まっていたのだろう。11時過ぎには爆睡。

朝、携帯を見ると、珍しくトモからメールがきていた。ベティの快方をしているオレを見て、奴は男として感じるところがあったらしい。トモが生きて行く上での何かの刺激になったのなら、うれしい。だが、いま、トモがそう感じられるということは、奴がもう少し歳を取り、人生経験をつんでいけば、きっとオレと同じことをする男になっていける。

オレも昔、トモと同じ経験をしたことがたくさんあったからだ。

仲間内で盛り上がったとき、だいたい若い奴は無理をしたり、自分の限界を知らないで、失敗をやらかす。年上や先輩からみれば、決して失敗ではなく、経験と思えるものなのだが、若いときにはそうした年上や先輩の温かい視線がわからない。しかし、そうしたときに、どう年上や先輩たちが、やんちゃやってしまったオレたち若い奴に接しているかで、その人の器が見えた。そして、尊敬する先輩の姿を見て、たくさんのことを教えてもらった。

人は、何事か困難があったとき、困っている人間にどう接しているかで、その人の底力が見える。それは、口先の言葉やきれい事の言葉ではなく、その人の人格が行動となって、そのまま現われるからだ。

理屈が立ち、自分を大きく見せる言葉はいっても、行動で示せない人間は、信頼がえられない。それを教えられてから、オレは、自分の姿が周囲の若い連中にどう見えているか、尊敬はされなくても、オレの普段の発言や言葉を裏切らない人間足りえているかが大事だと思うようになった。

ひとつには、舞台や映像など、たくさんの人間をまとめ、その信頼を得られないと自分の仕事を実現できない世界に身を置き続けていることがある。オレの変態ぶり、いい加減さを承知の上で、オレの仕事や夢に付き合ってもらうためには、土壇場での決断と行動がすべてだからだ。

いまの時代、人からどう見られようが、自分がこうあれば、それでいい、あるいは、人から自分の行動がどう見られるか、それを考えない人間が多い。もちろん、この世に完璧な人間などいやしない。オレもそうだ。だが、よくいわれることだが、事件や事故、パニックになったときに、どう行動できるか、するかで人の度量が読まれる。それを常に心のどこかに置いておくことは、いまの時代、必要なことだと思う。

「乱において、治を忘れず。治にあって、乱を忘れず」。
変革のとき、何かが変るとき、モラルや常識が乱れるが、その状態に埋没し、価値が乱れている世に、身をまかせるのではなく、どんなに狂気乱舞するときでも、本来世を治めるための乱れなき、価値を見失ってはならい。だが、世の中や人心が治まっているからと安心しないで、それはいつでも乱れるものだという危機意識を持ち続けよ。孫子の兵法にある言葉だ。

オレは、それを心の奥の構えは、常に解くな、ということだと理解している。「武士道とは死ぬことと見つけたり」も同じ。

普段おバカもやり、下ネタを爆裂させていても、そうした心の構えだけは大切にしたい。その断片を若いトモが拾ってくれていたことは、オレにとっては、大きな励みだ。