秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

風が吹いて

風が吹いて キミがうつむいた

どうしたの…

キミは目をしばつかせ

ぼくはキミの顔をのぞき込んで 戸惑ったみたいに

目にごみが…

君はとてもつらそうに目をしばつかせ

思わず目にふれようとうする君の手をぼくは…

そして 風が吹いて

また 風が吹いて

こんなときにはね…

ぼくは そんなふう丸めたキミの背中が ひどくまぶしくて

ごろごろするの…

痛っ…

キミは、まるでそばにいるぼくのことなんか

すっかり忘れたみたいに夢中になって

涙ぐんでしまった右の目をみようと

わずかにふれたぼくの手から

いやがるみたいに顔を返して

ちょっと…

二、三歩行くと、またすぐに立ち止まった

だから、こんなときにはね…

キミに近づくきっかけみたいに ぼくは

そして 風が吹いて

また 風が吹いて

爽やかな九月の風が吹き抜けて


ハンカチの先を唾でぬらして…

キミは堪忍したみたいにひとり言をいって

ぼくに泣きはらした目をみせようとして

痛っ…

また うつむいた

だから こんなときには 閉じるんだよ

目を…

ぼくはやっとそこまでいって

キミは いつもの首をかしげるしぐさを

きょとんとしたあの顔を 痛みを忘れたみたいに

涙がね…

キミは知らないことを聞かされるときの

あの顔つきで

どんなウソでもすぐに信じてしまいそうな目で

ぼくをみて ぼくは…

そして 風が吹いて

また 風が吹いて

鮮やかに九月の風が吹き抜けて


目をつぶると涙がね 痛くて涙が出るだろ…

キミはじっとぼくの口の動きにみとれて

目のことなんか気づきもしないで

涙がね 涙が出るのはね

目の中に入ったごみを洗い流すんだよ

涙がね…

ぼくはとても大切なことをキミに話すみたいに

キミは ひとことひとこと 一生懸命になって

そして 風が吹いて

また 風が吹いて

そして 風が吹いて

また 風が吹いて

九月のやさしい風が吹き抜けて