誰かが風の中で
大ヒットしたテレビ映画、市川昆監督作品『木枯らし紋次郎』のタイトル曲。
これまでのテレビ時代劇映画の常識を越えた、画期的で斬新な台本と演出。勧善懲悪でなく、ニヒリズムにあふれた、虚無的な時代劇は、オレたち若者の心をとらえた。
「あっしには、かかわりのねぇことでござんす…」と、人と深く関わることを遠ざけながら、結局は、無言で窮地にある庶民を助ける。が、そこで、ありがちな情の世界に流されることなく、再び人を突き放し、どこにも、だれにも帰属せず、孤独な旅を続ける…。
己のルールブックだけを頼りに生きる、その生き方に、若者たちが共感した。
高校生のオレもその中のひとり。初回放映を偶然見たオレは、すぐにとりこになり、まだ譜面も市場に出ていない頃、自分でコードを探って、ステージで歌った。まだ、それほど話題になっていない頃。
丁度、高校を卒業して、浪人を決め込み、自分がどこへ向かうのか、定かではなかった頃、自分への応援歌だった…。