秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

誰かが風の中で

大ヒットしたテレビ映画、市川昆監督作品『木枯らし紋次郎』のタイトル曲。
 
フォークの神様といわれた、小室等ひきいる六文銭というバンドと日本人離れした歌唱力の上条恒彦がタッグを組んで、テレビ映画の視聴率に合わせて、大ヒットした。
 
後に、上条恒彦は東宝ミュージカルにデビューし、森繁久弥の後をうけ、『屋根の上のバイオリン弾き』の主演をやる。
 
主演の中村敦夫は、ハワイ大学を出て、俳優座で学び、30歳を過ぎて、この作品でスターダムに上った。後に、キャスター、政治家となり、いまたまにテレビにも俳優として登場している。
 
池波正太郎原作の『必殺仕置き人』が同じ時間帯で絶対の視聴率をとっていたが、笹沢佐保原作の『木枯らし紋次郎』が、その牙城を突き崩した。
 
これまでのテレビ時代劇映画の常識を越えた、画期的で斬新な台本と演出。勧善懲悪でなく、ニヒリズムにあふれた、虚無的な時代劇は、オレたち若者の心をとらえた。
 
「あっしには、かかわりのねぇことでござんす…」と、人と深く関わることを遠ざけながら、結局は、無言で窮地にある庶民を助ける。が、そこで、ありがちな情の世界に流されることなく、再び人を突き放し、どこにも、だれにも帰属せず、孤独な旅を続ける…。
 
己のルールブックだけを頼りに生きる、その生き方に、若者たちが共感した。
 
高校生のオレもその中のひとり。初回放映を偶然見たオレは、すぐにとりこになり、まだ譜面も市場に出ていない頃、自分でコードを探って、ステージで歌った。まだ、それほど話題になっていない頃。
 
丁度、高校を卒業して、浪人を決め込み、自分がどこへ向かうのか、定かではなかった頃、自分への応援歌だった…。