秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

天の啓示

この一月、運動と食事のコントロールに気をつかっている。

前にも書いたが、来月港区の健康診断があり、前年、気をつけろといわれていた課題をクリアしておきたいから。それと、物事があれこれうまくいかないときは、身体を鍛えるのは、精神的にいいからだ。

が、しかし。昨日、雨のそぼ降る中、雨天用のカッパを羽織り、いつものように走ったのがいけなかったか。いや、いつもより余計に走ってしまた。そのせいか、昨夜から、咽と鼻の具合がよくない。鼻風邪をひいてしまったらしい。

最近は新型ばかりでなく、風邪が流行っている。オレの回りでも、軽い風邪や咽を腫らしたという人間がずいぶんいる。金曜日の芝居見物のときから、風邪の走りかなと思っていたが、やはり、そうだった。雨の中、がっつり汗をかいたのだよくなかったらしい。

基本、オレは扁桃腺が弱い。ハンナのばばあにいわせると、「お子ちゃまね」ということになる。5、6年前ままでは、毎年年2回、扁桃腺を腫らし、40度近い熱にうなされ、這うように、いきつけの病院で抗生物質と栄養剤の点滴をうけていた。

だから、咽の痛みはこわい。それに、扁桃腺はだるくて、何もできなくさせる。前に一度、扁桃腺を腫らしたまま、40度近い熱を出しながら、3000人規模のイベントのゲネプロ、本番の演出をやり、本当に辛かった。メシが食えない、唾が飲み込めない、だるい、節々がいたい…。体重が10キロ近く落ちる。

それが不思議なことに、この数年はまったく症状がでない。風邪らしきものをひくのも、ずいぶん久しぶりのことだ。

今週は、あれこれやること、決断しなくてはいけないことがあったのだが、その気合のいるときに微妙に風邪をひく。これは、もしや、焦るな、じっくり考えろという天の啓示なのかと思う。

人は、生きていく上で、実は、天からの啓示をたくさんもらっている。

体調の変化もその一つだし、人との出会いもその一つだ。オレにはよくあるが、作品やイベントの企画や構成、キャスティングを考えているとき、ふとつけたテレビの番組やラジオのニュースで、あ、これだと気づかされることがある。

犬も歩けばではないが、人は何かを求めていると、その求めているものへの手掛かりをもらえるときがある。また、焦ったり、不安になっているときに、体調を崩したり、思うようにいかない試練や停滞に遭遇することもある。

そこで、手掛かりをもらいながら、気づけなかったり、どうしてうまくいかないんだよと、立ち現われた状況をうらんでいては、その時を生かすこともできないのではないかと思う。

法華経の三部経に、観世音菩薩品第二五というのがある。苦難や試練、危機にある人を救う菩薩だ。いわゆる浅草寺の観音様のこと。ダライラマは観音様の生まれ代わりといわれている。

この観音様、現われれるときは、いろいろな姿に化身してあらわれる。苦しんでいる人の状況や能力に応じた姿で現われるというのだ。だから、苦しんでいる人には、すぐに、それが観音様だとわからない。

道端で、貧血で倒れこんでいるときに、ふと声をかけてくれる見知らぬ人。何かのときにふと手を差し伸べてくる未知の人。そうした中に観音様はいるというのだ。

しかし、考えてみれば、自分を育て、成長させてくれているもの、すべてが観音様かもしれない。仕事のことを心配してくれる人、自分の生活のことを気にかけてくれる人、元気がないとき声をかけてくれる人、困ったことがあったとき、相談に乗ってくれる人…。

人は、すべて観音様に囲まれて生きているのかもしれないのだ。

よりよく生きようとしても、所詮、人間の頭で考えられることには限りがある。自力で道を拓く努力を怠ってはいけないが、自力ではどうしようもないことの方が、この世には多い。

他者の力を借りなければ、存在できない自分という非力さがあるから、周囲への感謝や気遣いも生まれてくる。

天の啓示は、すべからく物事をうまくいかせるためではなく、そうした人間的な気づきを持たせるためにあるのかもしれない…。