秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

分断という名の混濁

いま分断や分裂という言葉をよく耳にしないかい?

アメリカの大統領選後、日本のマスコミもよく使う言葉だけれど、そして、海外の報道でも、難民問題と経済問題、貧困、格差を抱え、だからこそ、分断や分裂の回復の必要を訴える言葉がよく使われているけれど…

実際に世界で起きていることは、そんな生易しいものじゃない。二極対立の左とか右とか、保守と革新とかに整然と分けられた、理念や理論に基づくようなナントカ主義やナントカ論によるようなものではない。

理念や理論などから程遠い、感情的で、衝動的で、情動に突き動かされた混濁したものだ。

はっきりいえば、そこに理論や理念、明確な方法論も具体的処方箋もない。組織されたものでも、組織でもない。だから、混濁したことがあちこちで起きている。

それは分裂や分断といった、お行儀のいい言葉を越えている。そう感じられない人は、相当に不勉強か、無知か、鈍感な人だとぼくは思う。

シカゴではこの数ヶ月の間に50人もの人が銃で死んでいる。シカゴに限らず、アメリカの普段何もないショッピングモールで突然、グループ同士が殴り合いを始めるということも起きている。

大統領選後、SNSの意見に反論した者と反論された者、それぞれの意見を支持するグループがSNSを越えて、SNSでつるんで、実際に暴力で互いを排除にかかる。場合によって銃を持ち出す。

イギリスでは、大西洋を渡っていのちからがらたどり着いたシリアなど中東からの難民を病気やケガがあっても、ひん死の状態でも、平然と海に追い返す地域のグループが、難民支援の人々を弾圧する、脅迫するということが起きている…。

これも組織された集団でも、なにか明確な主義、たとえば白人優先主義とかいったことでつるんでいるのはではなく、ただ、移民がくるとオレらの村がダメになる、それだけの生活感情によっている。

つまらない日本のテレビのわかったような顔した無知なコメンテーターや評論家、タレント上がりのキャスター、アンカーに説明できるような代物ではない。もっとも、そうした報道さえ、この国のテレビ報道は、ほとんどしてない。NHKのBS1くらいなものだ。

こうした状況、トランプ政権を生み出したアメリカのものとか、中東から難民の直接的課題を抱えている欧州のものだとか、遠いことのようにぼくら日本人は思っているけれど…

この国でも、沸点へ向かって、分断、分裂という名を借りた、混濁した社会はすでに始まっている。

実業や新規市場、構造改革もないまま、表向き、株価や円安が続いていることで、ナンチャッテ景気安定を装っているけれど…

それすらなくなってしまい、ただでさえ、貧困度が先進国トップの国がより経済に息詰まれば、国の経済の不安定の中、逆に政権の座にいることで一山儲けているトランプ氏やプーチン氏が国を私物化するような状況が、この国に広がるのは時間の問題だ。

いまの世界、そして国の状況を冷徹で、ち密に見つめる目を持たないと、そして、それゆえの国民主体の改革をやらないと、この国でも、あるとき、ある場所で突然に、意見が違うというだけで、たいして豊かでもない者同士が、不満のはけ口のように、殴り合いを始めることになる…