秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

筋書

この年末は、あちこちで劇場型の、劇的な筋書のないドラマが生まれている。そう思わないかい?

それは、世界が、国が、社会が、これまでと同じでは立ちいかなことを示してくれているのかもしれない。

数学的にいうと、筋書のないドラマというものは、厳密には存在しない。小池議員が都知事に当選したのも。その結果、東京オリンピックと築地豊洲移転工事の不正が暴露したのも。

ワールドシリーズカブスが呪いを払い優勝したのもw 日本シリーズで2連敗のあと、日本ハムが4連勝し、最終回の攻防で満塁ホームランが飛び出したのも。

それを生み出すための数量的、物理的に計測できる都民の動向、報道の頻度、小池陣営の政略、戦略、戦術があり、野球でいえば、見えない努力、トレーニングや選手育成、トレード、チームワークづくりといった、マネージメント、そして選手個々のモチベーションの強化が背景にある。

ISの登場も、そこにある反米、反欧州も。そのためには、手段を択ばないやり方も。
それを生んでしまった現状の国際政治経済、安全保障の数量的、物理的矛盾や身勝手さがある。理論的に説明のつくことだ。ある日突然、テロリストやテロ集団が組織され、登場するわけでも、テロが起きるわけではない。

アメリカの大統領選が事前のマスコミ、政治アナリストの多くの予測に反して、超保守のトランプ勝利に終わった。

そこにも、高学歴の富裕層で、金融、ITといった新産業にかかわる人々と同じ土壌に乗れず、同じ白人でありながら、高卒以下ために、格差に取り残され、かつ優秀なネイティブアフリカンや他人種に追い抜かれてきた人々の数量的、物理的計測可能な動向がある。

格差の中で、這い上がり、不動産王となった男は、カネはあるが、いわゆるアメリカの知識層やウォール街の人脈とは無縁な人間だ。簡単にいえば、既存政治経済から遠く、知性や文化芸術とは遠い、ただの拝金主義の典型的なヤンキーだ。

言葉は乱暴で、女性蔑視もある。白人優位主義者でそのためには、差別的な発言もものともしない。

お行儀よく、無難に、富裕知識層がつくる既得権や利権、継承される優位性の世界とは真逆にいる。そして、平等や平和、博愛と彼らが唱えながら、既得権や利権のために、言葉とは裏腹な世界をつくっていることも知っている。

子どもを守るためには、倫理道徳に反しても、人種差別者と批判されてもくじけない。そして、たたき上げの人間だからこそ見える、そうした富裕知識層の背徳も、脆弱さを知っている。

ぼくは、ヤンキーというのは、気の強く、腕力もあるおばさんのことだと思っている。

おじさんではない。おばさんだから下品な下ネタをいっても許されてしまう。一度こうと思い込むとその思い込みを愛する子どもたち、コンプレックスに固まった身動きのとれない男たちに納得させ、ケツを叩くことができる。そして、彼らに愛される。

おそらく、トランプという人は、個人的に交流を持つと、コワモテではなく、人にやさしいのだろう。金にものをいわせたとはいえ、でなければ、これだけの票は集められない。

マスコミやリベラリストから見ると、許せない思想や考えの持ち主だが、接戦とはいえ、民主的な方法で選ばられたのはまちがいない。この事実は揺るがない。

だからここにも、数量的物理的な選択が働いている。アメリカの人口の5割しかいない白人。その1割程度が社会資源や社会資本を独占している。次の大統領選挙では、白人票は、5割を切り、白人男性大統領の最後になると予想されている。トランプの知性や資質に疑問を持つ共和党の知識階級も、対立党の女性大統領誕生は許したくない。

高学歴富裕層vs低学歴叩き上げヤンキーのプロレス興行。当然、大衆は、後者を応援する。その潜在的な欲求、願望、エナジーがあることを見抜いたのが、トランプとその周辺で、それを見世物にしてクリントンをリンクに乗せた。

そこにも筋書があったのだ。知識層では考えもつかない筋書。そこに敗北した。

ここから、世界が、日本が、この筋書に飲み込まれていく。