秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

国力

参議院選挙へ向けた動きが急加速している。衆参同時選挙、消費税再増税の延期もおかしくない情勢になっている。

ほかでもない。年初以来、株価が危険水域に入ってきているからだ。

中国の景気の減速は昨年末から今年にかけてあらわになり始めた。楽観的に考える人も多いようだが、株の取引き停止が続く現状では、信用不安は現実のものになりつつある。原油価格は下がりつづけ、株の下落とともに、円高へと移行しつつある。

中国は必要のない公共投資を矢継ぎ早にやり、国内景気を支えようと必死だ。中東はISの問題と同時に、原油価格の下落でサウジとイランの対立が示すように、潰しあいを始めようとしている。

世界最大の産油国であるアメリカは、石油マネーの圧力で下落をとめるために、軍事による威圧外交を全面に打ち出し始めた。紛争や戦争は石油価格を上昇させる一番簡単な道だからだ。

いうまでもなく、この国は、国債の無制限な買い取りという禁手と年金など国の資金=国民の金を世界の株式市場に投入という、これも禁手ともいっていい株式だよりの丸投げ戦術で実態経済とは結びつかないマネーゲームを続けた。

数字のマジックをやって、一部、円安によって潤っている企業、株高によって企業の含み益を増やしているところもあるが、雇用や賃金、福利には跳ね返っていない。

数字のマジックでしかないからだ。

それどころか、アメリカのネオコンの圧力で軍事産業にも参入しようとしている。とりもなおさず、それ以外のこれまでの産業では新しく、大きな市場がないことがわかっているからだ。

景気の波はあっても、数字のマジックをやっている間に景気は浮揚する。してもらうためには、なりふり構わずやる。補正予算も大盤振る舞い。だが、そのもともとの幻想がこわれかけている。

次の参議院選挙から18歳以上が選挙権を持つ。その数約230万人。若い世代の政治への無関心と保守傾向から、政治的に浅学な彼らの票田で、憲法改正のために参議院衆議院同様、軟弱な野党を圧倒し、自公支配にするねらいもそこにはある。

今朝、NHKで19歳以下の男女を集め、18歳以上の選挙権について、意見交換番組をやっていた。意見交換というよりも、大人たちが議会制民主主義のしくみと、シルバー民主主義といわれる現在の有権者世代の偏りを説明し、貴重な1票を自分たちの未来のために使おうという大人からの示唆、もっといえば洗脳番組でしかなかった。

選挙や社会に目を向けさせようという意図はいい。だが、大事なのは、身の回りの自分たちの知らないところでどのような不利不足、格差があり、それがどのように知らされているか、知らされていないのか。つまり、情報リテラシーをどう育て、守るかの議論の方がはるかに大事だ。

テレビ報道、新聞報道をただそのまま受け取るのではなく、自分たち10代が自らの努力で報道の真相、報道が切り落としている断面をどう探し当てていけばいいのか。そのための方法を考えさせなくてはいけない。

ゲストで登場した、海外からの10代の留学生たちが、中学生の頃から家庭、学校、地域で政治を話題にした時間を過ごし、生活の場で議論をしている体験を紹介していた。じつは、これは、私たちの子ども時代まで、すべての家庭、学校とはいわないが、普通のことだった。

それが、いまでは番組に出ていた10代の日本人の子どもたちは驚きと新鮮さで受け止めている。

問題は、未来のために1票をではなく、このことだ。

リテラシーは同じ考え、同じ無関心からは育たない。多様な意見をぶつけあえる、無関心でいではいられない。難しい内容を理解できなかったとしても、そうした場が子どもたちの日常に保証されていることがなによりも大事なのだ。

いまの長い物には巻かれろを大人がやっていては、そうした場はつくられるどころかつぶされていく。自ら思考し、検証し、新たななにかを生み出す人材は育たないし、生まれてこない。

やることは選挙にいかせることではなく、選挙にいかなくてはいけない使命感を育てることだ。国力とは、その力の大きさをいうのだ。