秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

不明者

なにかのけじめでもないと、忙しいときは名刺の整理や携帯に登録した番号の整理といったことはやらない。

私の知る経営者やビジネスマンの中には、とてもまめな方がいて、名刺交換して数日のうちに、名刺交換の御礼状やメールが届いたり、初対面の人の名刺に出会った日付や場所を書き込むという人がいる。

とてもいい事だし、大切な心掛けとは思う。が、だからとって、出会った人たちすべてとその後も深いつながりを持つという保証はない。即物的な言い方だが、具体的に仕事のつながりや個人的な関心でもない限り、その場だけで終わるということも少なくないだろう。

必要がないと、ほぼ大勢の出会いの中のひとりという形で顔は覚えていても、名前が出て来ないということもあるかもしれない。

いまは、知り合って少し話がはずむと、SNSやってますか? と問い合うことも不思議ではなくなった。だから、かつてのように、まったく記憶から消えるということはないのだろうが、それでも顔と名前が一致して、SNSで継続的につながりを持つ続ける人というのは限られている。

忙しいときは、いただく名刺の量が増える。また、あれこれ動いていると、連絡を取り合う必要から携帯番号の登録数も増える。

だが、必要な一時期が終わると、連絡をとることも、連絡をもらうこともなくなる。そして、この人だれだったろう、どういう人だろうと振り返ることになる。

あるいは、役職や部署が変わる、退職や転職といったこともあり、つながりが続かなくなるとうこともあるかもしれない。

私たちの人生は、出会いをつくりながら、同時に、いわば、多くの不明者を生み出している。そのときの利害関係や活動の事情や都合…。それによって、そのとき必要としている人、集団、組織がある。そして、それによって、また、必要としない人、集団、組織が生まれていく。

その多くは自分の都合であり、自分の側の理由だ。

だが、そればかりをやっていると、思わぬところで大事な人を見逃しているかもしれない。利害や損得を越えて、つながれる人をミッシングしているかもしれない。

忙しさの中にいるときは、そうはいかないだろうが、少し時間ができたら、そうした人との交流や懇親の場をつくるもの悪くはない。

忘れていたなにか、見落としていた大事なものをみつけられることもある。それは、自分自身を不明者にしないための道でもある。