秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

脳の誤り

大人の細胞は、約37兆8千億個あるといわれている。以前まで、60兆個といわれていたが、最近の研究でこれが定説になっている。

ひとつひとつの細胞に生命維持のための役割があり、目的使命が担わされている。だが、私たちがその細胞ひとつひとつの働きを意識することはない。免疫細胞のT細胞やB細胞、NK細胞が毎日のようにがん細胞やその他の悪性細菌をせん滅させていても、私たちはそれに気づけない。

生体維持の司令塔は脳の働きが担い、末梢や体内に細菌や悪性化した細胞などが現れると末梢から伝達された探知情報は脳に伝わり、脳が必要に応じた指示を出し、それが必要な細胞の活性を作り出す。

つまり、私たちの脳は、自分たちの体の一部でありながら、私たちの意識、自覚的認知の前に、勝手にいろいろな仕事をしていることになる。

自動防御装置、自動抑止装置、自動破壊装置、自動再生装置といったすこぶる優秀な機能を装備した脳だが、この自動装置ゆえの落とし穴を持っている。

誤謬だ。誤った認知、誤った理解、誤った認識とこれによる誤った指令だ。

対応のスピード化には、経験のデータの蓄積とこれを運用するためのパターン化が一番効率がいい。つまり、自動装置機能を高めるために、類型的で経験則を重視する。

そこに落とし穴ができる。心筋梗塞の初期を察知しながら、移動する肩や首の痛みとしてそれを表したり、ストレスの信号を腰痛の痛み、自律神経の障害として示したりする。

茂木健一郎がブームだった頃、よく脳による知覚の誤謬を示すのに、絵の間違い探しテストをやっていた。幼児の多くが瞬時に認知できる誤りを大人になるほど指摘できなくなる。

自動装置の精度を高めようとしながら、皮肉にも、現実認識での難しさが生み出される。それが熟練していく脳の宿命だ。

これは、何度か紹介している記憶の歪曲にも通じる。心の傷やストレス、あるいは自己保全、自己正当化のために、事実とは違う記憶へ記憶の書き換え作業を勝手にやってしまう。

だが、本人はまったくその自覚がない。

家庭、地域、社会、国、世界をつくっているのは、じつは、こうした私たちの脳ひとつひとつだ。その集合の単位として、家庭、地域、社会、国、世界がある。

どうだろう。私たち個人のレベルで起きる誤謬や記憶の書き換え、経験則による自己保全、自己の正当化が跋扈(ばっこ)していないだろうか。そして、自動装置機能ばかりを高めることに必死になり、脳が起こす誤りがあることを疑うことを忘れてはいないだろうか。

年末からの私の腰痛もそうだった…w