秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

今生の使命

同じ地域、同じ組織、同じ家族の中でさえ、みなが同じように考え、行動し、一丸となる…ということは容易なことではない。

いつもいうように、人々の生活欲求、求める質や形はじつに多様化した。

ある人にとって、重要な生活のアイテムやクオリティが、ある人にとっては意味をなさないものであり、いくら近親者や近隣、同志という理由だけで、それを共有することすら難しい時代を私たちは生きている。

そもそも、人と人が完全に思想や行動、あるいは信念や心情を共有することなどできない。できると考えるのは、そうありたいという願望がそうさせるだけのことで、じつは、ほぼ不可能に近いことだということを多くの人が知っている。

日本人のように同調圧力が強く、付和雷同型、寄らば大樹の影を好む民族は、神話のようなそれを強く盲信したがる傾向が強い。だが、いかに神話を求めようとも、現実とのかい離が時代とともに広がっている事実を否定する人は少ないはずだ。

だからこそ、いろいろな意思の表明ができる機会と場が重要になる。違いを違いで否定するのではなく、普遍的な尺度、普遍的な価値に照らして、みなが合意できる形は何なのかを探求する意図と決意、そして未来への行動が必要なのだ。

合意形成とは、そのような質の上に初めて成立するものであって、個人の物差しや浅薄な学習から生まれてくるものではない。

人類が犯してきた多数の過ちと、それに匹敵するほどの過ちを犯さないための知恵と創意と取り組みは、過去のものではなく、その積み重ねの上に、いまの私たちはある。

私たちは、同じように過去の過ちをしないために、過去よりも一層、知恵と創意と工夫をこらし、次に自信と誇りを持って与えられる未来をつくらなくてはいけない。

その努力の中に、多様性を越えて、人と人がからくもひとつにつながれるヒントや暗示をもらえるのだ。そこに普遍的な人類、人としての基準がどこにあるのかがみえてくる。

そうした目で、いままた置き去りにされようとしている沖縄を、立憲国家の姿とは到底考えられない政治の現実と、いまだ11万人以上の人々が帰還できない福島の現実を考えてもらいたい。

中東の悲惨はだれが巻き起こしてきたことなのか、考えてもらいたい。

そして、それを考えることがいまを生きる私たちが共に与えられている、今生の使命だと感じてもらいたい。