秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

Something

ファッションへのこだわり、食へのこだわり、アートへのこだわり、ライフスタイルへのこだわり…それらは、関心のない人々には、何の意味もなさない。

まして、人が日々の暮らしを営む上で、万人に万遍なく求められ、かつ必要とされるものでもない。

切り詰めて考えれば、絶対不可欠のものはひとつもない。

だが、見方、言い方をかえれば、映画や美術、音楽といった芸術も、人の暮らしにとって、絶対不可欠であるとは言えない。

しかし、それがあることで、暮らしの中だけではえられない、興奮や感動、感銘を受け、暮らしを補強したり、支えたり、前へ進める力になることはある。

豊かさとは、単に金銭で手に入れられるものを獲得できることをいうのではなく、それプラスのSomethingがなければ、豊かさとはいえない。

あるいは、金銭で手に入れられるものを獲得しなくても、Somethingを持てる人間であれば、金銭に不利不足があっても、十分、豊かさを感じることはできる。

自分の日常だけに追われて、美的センスを磨けない、気づけないことも、豊かさと出会えていないことでもある。だが、その出会いは物理的なものでは埋められない。悲しいかな、貧富にかかわりなく、その人の持って生まれたセンスが、
Somethingが鍵だ。

昨夜、NHKBSプレミアで、セレブ文化の時代を拓いた、VOGUEの辣腕女性編集者アナ・ウインターと編集部のドキュメンタリーを再放送していた。

ご存じの方も多いだろう。映画「プラダを着た悪魔」のモデルといわれている人物だ。

いろいろな戦略もあってだろうが、VOGUE編集部の制作に密着し、現場の人間関係、スタッフの駆け引き、人間的な対立や葛藤を着飾らず、露呈していた。

ある意味、制作の現場にあるドロドロした部分も包み隠さず、追いかけることで、いいヒューマンドキュメントになっている。

セレブ文化という、いわば、格差社会の象徴的な世界を主なターゲットとして、雑誌をつくる。そこには、いろいろな批判もあるだろう。私自身、そのフォーマットには否定的だ。

だが、おそらく、アナ・ウインターが求めているのは、表層的にセレブ文化を商品化したのではない。その証拠に、徹底してクオリティにこだわる。その先に、Somethingを垣間見せようとしているからだ。

Somethingにこだわり、それを追及し続けるということは、単なる金儲けやビジネスとして割り切ってできることではない。自分自身にも、Somethingを問われる。

20代、30代の頃、いつも口癖のように、このSomethingが必要だと、部下や仲間にいい、自分自身でも意識していた。改めて、それに気づかせてくれた作品。

ふと、私にとって、大きな出会いとなった、徳島県の厳しかった映画制作の女性クライアントの方の姿が浮かんだ。

私もSomethingにこだわり、がんばらなくてはいけない。

ちなみに、私はVOUGEより、FIGAROを愛読しているw