秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

森と想像力

明治神宮の森が、人工的で、計画的な植林によってもたらされたものだと知っていた人はどのくらいいるのだろう。

昨夜のNHKスペシャル明治神宮 不思議の森 100年の実験」。

大正期、1915年から5年の歳月を費やして人工的につくられた都市の中の自然林。当初から江戸期以前からあった東京の原生林を再生することを目的に造営されている。

日本思想の根幹にある神道思想と森がつくる自然は深いかかわりがある。全国の神社、社は、そのすべてが木々に囲まれて造営されている。

明治期以前まで、資源循環型の持続可能社会だった日本。江戸期、鎖国でも経済が維持できていたのもそれがあったからだ。その日本人の生活と人々の行動原理(所作)は、森を中心とした自然信仰と不可分なのだ。

余談だが、それを象徴するのが御柱祭りで知られる諏訪大社

諏訪大社の神は、じつは、出雲大社の神の系譜。出雲が諏訪に出現したのは、天照に出雲を追われて、縄文から巨木信仰でつながっていた諏訪に行き場を求めたからだ。

古事記は治世者によって史実を歪曲して書かれている。文字面だけ読んでいては、当時の歴史の真実が見えない。大和朝廷が出雲を征圧する中で、神道以前の原始宗教としてあった自然信仰を取り込で神道を確立させていく。

縄文から根強くあった自然信仰を取り込むことで、大和朝廷は治政と支配を円滑に進めた。それが日本人の心象風景の原点だったからだ。

人の手による自然林の造営
には、普通、300年かかるといわれている。それを150年の半分で実現しようとした当時の造園家や植生研究者の能力と知恵にも脱帽だが、彼らの予想を50年も早く、自然は生み出してしまった。

自然は、人々に予測不能の災害も与えれば、このように、都市のど真ん中に自然林を生み出すこともできる。いずれも、自然との向き合い方、自然への畏怖と尊敬のあるなしにかかわっている。

人が想像することは実現できる…。だが、想像力を失い、即物的で、現世主義がそれとはまったく真逆の道へ私たちを歩ませ続けている。

日本、日本と愛国心を煽るのなら、本来、あるべき日本人と日本の精神文化が世界の明日につながるという想像力を持つことだ。