秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

浜の母ちゃん飯

いつもいうことだが、なにか人を集め、催事をやるとき、そこには、明確な目的やねらい、あるいは、思いや願いといったものが必要だと私は考えている。

これは、私が仕事として、イベントプロデュースをやり、あるいは、販促のPVやCMをつくっていたからということもある。
 
だが、それだけではなく、人のお金、たとえば税金を元とする行政からの助成金や人の寄附金、あるいは企業からの協賛金といったものをもらうからには、そこには、絶対といってもいい、明確な意志とそれを示す表現がなくてはいけない。
 
簡単なことだ。そこには、社会的な責任と義務が生まれるからだ。

社会的な責任と義務の意識があれば、ただにぎわいをつくればいいではすまない。また、自分たちの楽しみとして、それをやればいいでは終われない。そういう厳しさが催事をやる側になければ、やる側の満足だけの催事でしかない。

今日、企画を提案した仲間の築地のイベントに参加してきた。実施は福島県。「ふくしまの浜の母ちゃん飯」。くわしちゃる、というコピーもいいw

震災から3年半以上が経過し、福島や東北の一部が抱える問題は、明確になっている。ひとつは水産と水産加工の苦戦。海岸線の地域共同体の再興。

もうひとつは、中通の震災と風評被害、それによる人口の流出。いうまでもない。すべて原発事故を起因とした、線量を背景としたものだ。

もちろん、そこには、原発地域、いわゆる相双地区の補償や今後の再建の模索もある。

原発事故を起因とする福島や東北の一部地域の問題を抜きにして、これからの道はない。震災からこれだけの月日が過ぎ、多くの人々の生活がいまも変化し続けている中、伝えなければいけないのは、「いまの福島の現実」だ。

その上で、福島を応援する人々の輪を現実的に、具体的につくっていくことしかない。

今回のイベントの参加者は抽選で50名。福島に来たことはあっても、福島県人はひとりもいなかった。なにがしか、こうしたイベントに時間を割いても来たい。そう考えて応募した人たちばかりだ。

私は、いまの福島をデータを示しながら説明する県職員の方の姿、いまの水産や水産加工の実状を朴訥に伝える、漁連の母ちゃんたちの話を聞きながら、そして、そこに真摯に耳を傾ける、50人の参加者の方々の姿をみながら、胸に熱いものがこみあげてくるのを感じていた。

ただ、浜の料理を提供して、安全ですよとわいわいがやがややるイベントではなかったのだ。きちんと、福島の実状を伝え、福島のいまを知った上で、応援してもらいたい、そして、福島を支えよう、応援しようという思いの輪をつくろうとしていた。また、参加者がその思いをうけとめていた。

いま必要なのは、50人の確かな応援団をつくることだ。それは、私がMOVEの活動を始めたときから、いい続けてきたことでもある。

風評に左右される、あてにならない不特定多数を相手にするのではなく、どのようなことがあっても、数は限りがあっても、この人を、この街を、ずっと見守ろう、なにかで微力でもいいから支えていこう。そう思える人の輪をつくることなのだ。

そして、支援する、される側。与える、与えられる側の関係を打ち破り、共に歩き、同じ生活者、市民としてのつながりを強くすることなのだ。

 
それが計算にない催事は、震災からこれだけの月日が経ち、数々の問題が明確になっているいま、なにをめざし、どこへ、なにを伝えていこうとしているのか、不明のままだ。
 
支援をえない催事ならいい。だが、助成金や協賛金、寄付を受けるなら、それは、社会的責任と義務を負った催事とはいえない。