秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

確かに歩いていく

延びていた札幌国際短編映画祭の入賞作品とコンペ以外の上映作品の発表が昨日の朝あった。

予定よりほぼひと月遅れの発表。映画祭での上映はまちがないないと支持していただいた、観客のみなさんやいわき市での映画の上映会に尽力いただいたみなさん、制作に協力いただいた、いわき市富岡町のみなさんには、残念な結果となった。

入賞作品の多くがドラマ作品ではなく、ドキュメンタリーやアニメーション作品。しかも、相当若い世代の作品が中心だった。メイン審査委員の顔をぶれをみて、それはわかっていた。アニメやハリウッド映画の若い俳優経験者といった方が中心だったからだ。

札幌国際の審査員や傾向からみて、その意味でハードルが高いとは予測していたが、30分物のショートフィルムで映画祭となると、ショートフィルムフェスなど、かなり限定されている。国際映画祭となると、ほぼ国内では二つしかない。そこに、果敢に挑んだ。カンヌは30分物ではなく、15分。

制作がスタートするときにも書いたが、入賞ねらいというより、国際映画祭の場に福島を登場させたかった。しかも、震災当時や原発避難地域といった極限といっていい状況ではなく、被災地共通にある心の問題と子どもたちの問題に焦点を当てたかったのだ。

それがまた、いま子育て不安やそこからくる意図しない虐待といった、家庭、親族、親子、地域、学校の共通の課題として、見つめなおす機会になってくれればと願った。

残念ながら、力及ばず、今回は、国際映画祭の場に福島を出現させることはできなかったが、また、違う形で、私は、自分の本業の世界でこの挑戦は続けていこうと考えている。

尊敬する新藤兼人監督がなくなるまで、広島の被爆反戦にこだわり続けたように。
 
もちろん、私は、新藤監督のように、実直な表現は好きではない。だが、ごく当たり前の生活を奪われて起きる、人の日常の崩壊とそれによって、犠牲になる高齢者や女性、子ども、力なき平凡な大人たちの姿は描き続けたい。そして、それが、ある特別な人たちの問題ではなく、いまを、これからを生きる人たち、もっといえば、人類共通の課題であることを伝え続けたい…

と思っている。

いわきの仲間がいったように、30分にまとめるのに苦労した分、これを2時間物の作品でカンヌへという意欲はないわけではない。

ただ、うちにしては、相当に費用をかけ、共同制作会社にも負担を強いた。その分、東映にもがんばってもらい、セルの短編映画DVDとして、とりあえず、かけた費用や時間の分を回収することも、経営者としては進めていかなくてはいけない。

これについては、社会映画の世界でのこれまでの実績とノウハウがあるので、心配はしていない。今年、秋から来年春にかけて、前作の「誇り」と同じか、それ以上の反響はあると確信している。

幸せなことに、全国から上映会や試写会開催の依頼や実施の取り組みが進められている。国際映画祭の発表をまってと延期していた、東映本社試写室での上映会も実施する。これも東映の協力があったからだ。
 
 
監督として、作家として、反省している点やもっとこうできていればという忸怩たるものはある。しかし、いい作品だったせいもある。その欠点や短所も、私は、今回の作品ではよく見えていた。

そして、自分が残された時間で進むべき方向性と道ははっきりしている。そのjひとつの確認の道標に、この作品「みんな生きている」はある。

次は、堂々とカンヌに出せる作品に向かって、確かに歩いていくだけだ。