秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

おやじの背中

TBSが日曜劇場で、10話連続、著名脚本家で「おやじの背中」を放映する。かつてドラマのTBSといわれ、1956年からスタートし、一世を風靡した、この名作ドラマ枠は、「JEN」を除き、この数年、その面影を失っていた。
 
日曜劇場が始まった頃、東芝が一枚看板でスポサンサーになり、当初は、連作ではなく、一話完結で制作していた。多くの作品が単発放送ながら、芸術祭奨励賞を受賞。大空真弓山本圭主演「愛と死をみつめて」、池内淳子主演の「女と味噌汁」など、その後、リメイクされたり、映画化されたり、連ドラ化したものもある。

ドラマやシナリオを勉強するには、50分の一話完結ドラマは、じつにいい勉強になる。日曜劇場を見て、テレビや映画制作の道に目覚めた人は少なくはないだろう。
 
私がかつて戯曲を書き、いま、ショートフィルムや短編の作品をつくり、以前、CMをやっていたときも、少年期からテレビで単発のドラマを多数見ていたことが役に立っている。短い時間の中で、序破急をつける。そのコツを教えてくれた。

いまでは単発ではなく、連ドラの枠になっているが、今回、作家を変えながら、一話完結での制作は、いわば、単発ドラマに等しい。
 
八木プロデューサーのもと、第一話 岡田惠和 第二話 坂元裕二 第三話 倉本總 第四話 池端俊策 第五話 井上由美子 第六話 鎌田敏夫 第七話 木皿泉第八話 橋部敦子 第九話 三谷幸喜 第十話 山田太一
 
世代は異なるが、それぞれに個性や特徴があり、だれの本かがわかるタッチを持っている作家たちの連作。いわば、競作。「おやじの背中」というリングの中で、視聴者もそれぞれの作家が持つ、ドラマの味わいを楽しむことができる。
 
こうした試みは、TBSのドラマを担当する、それぞれの演出家にもいい学習になり、才能を育てるだろう。いや、俳優にもいい勉強になる。
 
若い頃、この日曜劇場を見たり、雑誌「ドラマ」に掲載されているシナリオを放送前に読んでいたとき、出来不出来があると気づいた。著名な作家でも、あれ…と思うような本だったことがある。

また、雑誌で事前に本を読んでいて、放映された作品を見て、演出がつまらないと思うこともあった。脚本を生かしていないと思うこともあった。
 
コンスタントにいい作品だといわれる作品を書き続けること、つくり続けることの難しさだ。同時に、それでいながら、それでも一定の水準以上を守っている。その凄さというものも感じた。
 
じつは、そう期待しないで、日曜日、そういえばやっていたな…とテレビを付けた。

第一話「圭さんと瞳子さん」 岡田惠和作 山室大輔演出 主演 田村正和 松たか子。久々にいい一時間ドラマを見せてもらった。脚本も、演出も、そして俳優の芝居も、気負いがなく、それでいて、脚本が描く、ある傷を負った父と娘の姿を美しく、深く、描いている。
 
たぶん、10話の中には、つまらないなと感じる作品もあるだろう。だが、第一話の完成度を見てしまうと、全部見たいと思わせる。録画していなかったのを後悔するテレビドラマは久々だった。
 
ちなみに、第二話は、役所広司満島ひかり。この間、フジの「若者たち2014」のダメさ加減を述べたが、いい忘れていたので、ふれておくが、そこで救いだったのは、満島ひかりと柄本祐の存在感。
 
いい本があれば、俳優はもっと輝く。