秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

ただひとつの道

ある仕事や取組みに向っているとき、夢にまでそれが出てくるということを経験した人は少なくないだろう。
 
その中の不安や心配が強いと、夢を見るどころか、眠れないという人もいるかもしれない。あるいは、疲れ果てているのに、眠ったと思ったら、眼が冴える…という人もいるだろう。
 
脳が休息していないからそうなる。そのため、からだも休めていない。なので、疲労感が昼間でも残るということが起きる。
 
だが、ある意味、そうした追い詰めを自分に課さなければいけないときが人にはある。あまりに強いストレスでは心身の問題にもなるが、物づくりにかかわる人間は、それはどこかで宿命、業と思わなくてはいけない。
 
そのように身を削ることでしか、いい作品やいいものは、なにもないところから立ち現われてはこない。
 
会社の役員をやっている頃、若い部下たちに、新作の企画100本という宿題を出していたことがある。だが、現実には、20か30。100本出せるやつはいない。それは分かった上でのことだ。
 
そのときにいったことがある。おまえらは、通勤中の電車の中でも、メシを食っているときでも、トイレでうんちをしているときも、風呂はいっているときも、彼女や彼氏といるときも、ひたすら考え続けたのか…目に入るすべてのものから、何かのヒントやアイディアを得ようとしたのか。

その覚悟と志を伝えたかったのだ。

どこかの大先生のように、すべてを思考に費やせるのは、ごくわずかの人間でしかない。時間があればとか、環境が整えばといっているうちは、なにひとつ形にはできない。

条件の整わないところでも、すべてをそこに集中できる。その力がいる。とくに、これから何事か形にしようという人間には、その鍛錬の時期というものがいる。
 
いわれても、それを素通りしてしまう。素通りはしないまでも、そうなる苦しさを生きられない奴は、何事も達成できない。

その苦しさを苦しさとは思わず、楽しめることができれば、次の道が拓けていく。
 
昨日、NHKイチローの特集をやっていた。イチローまでの禅僧のような鍛錬はだれにでもできることではないだろう。だが、彼がいうように、徹底して、自分のやることが好きでなければ、苦しさを生きることはできない。
 
まっすぐに、ひとつことに向う。それが自分の願いを形にする、ただひとつの道なのだ。