秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

未来への基軸

個々の人に視点を置くか、個々の実状ではなく、地域や組織、社会といった面に重点を置くか…。それによって、あらゆる施策の質と内容、そして方向性や目指すべきものが変わる。規模や予算といったコストも変われば、その手順や戦略、戦術も変わる。
 
が、しかし。それがわかっていない人たちが圧倒的に多い。
 
個々の人、個々の人が持つ事情や環境、状況。そればかりに気を取られていては不特定多数の幸福や満足、もっといえば、合意がえられない…と考えるからだ。

「木を見て森を見ず」という言葉があるように、木立ちひとつひとつの生業ばかりを観ていては、森全体のあり方に目がいかず、結果的には森をダメにしてしまう。確かに。そこで、一本の木を犠牲にしても、最大公約数としての合意形成ができればよしとする…という切り捨てが生れる。

だが、この20年以上の国や社会のあり様、世界の構造変化をみていくと、これまでのような包括的で、面的な制度やしくみ、施策や政策が実は、ほとんど有効ではないことが露呈している。一本の木の犠牲どころか、全体を考えた「規模」の施策が不特定多数を犠牲にする…ということが起きている。

カスタマイズという言葉にみられるように、大量生産大量消費という時代が終わり、規模の大きさや面として地域や組織、社会や国をとらえるだけでは、カスタマイズの時代に応えられない現実が屹立している。
 
にもかかわらず、国政や地域行政、大規模組織を動かす人々は、カスタマイズに応えるための訓練もされていなければ、学習もしていない。そういう時代と時代の要請を受けたことがなかったからだ。
 
そのため、金科玉条のように、これまでの「規模」とそれを動かす「システム」だけにこだわる。それが、国内家電業界の凋落に代表される製造関連企業の姿や国政・行政の財政破たんの端緒になっている。

確かに。大規模に個のニーズに応えて、カスタマイズに即応していくことは、途轍もなくコストがかかるほか、巨艦組織では対応が難しい。効率性や生産性を上げるためにではなく、利益率を上げるために再構築(リストラ)という名の人件費と経費削減をするのは、だから、所詮、巨艦組織を維持していこうというあがきに過ぎない。

規模を小さくすればいいのではなく、規模を構成している組織内の枠組を抜本からイノベーションしなくてはいけないばかりか、組織を構成しているひとりひとりの質と教育を高めなくてはとても追いつけない。

だから、「規模」における「面」としての取り組みとは別の、規模にこだわらない「個」への濃密な「点」としての取り組みが必要なのだ。

しかし、多くの人はそんな規模では多数の人々が幸せであることはできないではないかと無知を語る。おバカさんたち。よく考えてみたまえ。点は点とむすびつくことによって、線を形成できるのだ。
 
個への濃密な取り組みはラインを形成し、それがネット化することによって、面以上に個々への手当てをやりながら、水平的に面に広がっていく。

この国の人たちはネットワークというものの時代的経験が希薄。そのため、ネットワークというと規模と面だけが必要だと考える。SNSやツイッタ―といったツールが日本ではなく、欧米に生まれ世界に広がっている事実から何も学んでいない。しかも、それが世界を動かす4次元空間を形成し、世界の現実(リアル)そのものを補完したり、改革している事実に無知過ぎる。
 
選挙投票日まで、あと1週間を切った。どこの政党が個の取り組みを無視し、「規模」ばかりを語っているか。それもどこに投票するか未来への指針の基軸になる。